公募作品(2)
ごぉ~…ごぉ~…と掃除機の吸引音が響くこの部屋で、ごちりと別の音が鳴る。
「和真さん、そこどいて下さい。」
目の前でごろりと床に寝そべっていた人物に私…桃山穂香(ももやまほのか)は苛立ちの感情を露骨に出して言う。
「別にいいでしょ~今良い所なんだから。」
スマートフォンでトランプのゲームをしながら、こちらを見ずに答えるぼさぼさ髪で髭面の男…そのいい加減な態度に、思わず持っていた掃除機の吸引口をお尻にくっつける。
「んいっ!?ちょっとほのちゃん、地味に痛い!」
「どいてって言っているでしょ!」
怒りの言葉に渋々動いた男・黒田和真(くろだかずま)…そのだらしなさを見て、私は心の中で叫ぶ。
何でこんなのが、私の初恋の人なの!?
時を遡ると、大学在学中に巡り合った同じ学年の恋人と彼は卒業後結婚した。
その時は、向こうのお母さんから送られた年賀状に晴れ姿がきっちりと収められていて「二人とも綺麗ね~!」なんて呑気に見惚れていた母親がいなければ、私はその年賀状をくじが当たっている番号だったとしても、破いて捨てていただろう。
そのまま誰もが羨む様なさぞかし素敵な人生を送っていても、私には関係無い!と強く思いながら過ごしていたのだが、現実はそんな予想とはかけ離れたものになる。
和真の恋人が、浮気をしたのだ。
和真は大学に入って知名度のある大企業へ入社したものの、その忙しさから新婚生活は甘いものではなく、お嫁さんも働いて支えてはいたものの、共働きでストレスを抱え喧嘩する事が増え、寂しさが勝ってしまった結果…二人は二十六歳にして早々離婚する事となった。
「幸い子どもはいなかったから…残念な結果ではあるけどね。」
裁判が終わった頃に母に会いに来た和真のお母さんはそう話していたけれど、内心複雑だったに違いない。
そして、その傷が一番深い本人はといえば。
「ほのちゃ~ん、柿ピー無くなった、買ってきて~。」
これである。
「私が頼まれたのは掃除なので、お使いを頼むと追加料金が増えます。」
「そんなつれない事言わないでよ、おねが~い。」
離婚を経験して心がぽっきり折れたと言う様に会社を辞めて実家に帰ってきた彼は、親の脛齧り虫となってしまった。
普通なら両親から「早く働きに出ろ!」と言われる所だろうけれど、これまで真面目な人間だった和真がこの様な仕打ちを受けてしまい「まぁ、一年くらいなら良いよ。」とニートになる事を許してしまっている。
という事で、今彼は絶賛無職満喫中なのだ…そして、何故私がそんな男の元に来ているのかと問われれば。
「幼馴染のよしみで、汚部屋にハウスキーパーに来ているんだから…これ以上の温情は無い!」
元々大学生となりアルバイトを始めようと、掃除が好きな事もありハウスキーパーのバイトをしていたのだけれど、それを知っていた和真のお母さんからお願いされたのだ。
「ほのちゃん、申し訳ないのだけれど…うちにハウスキーパーとして来てくれる?」
何でも和真が実家に帰ってから、家が散らかる様になってきて、ご飯もゴミが増えるのにインスタント食品しか食べない時もあると、悩みを打ち明けられる。
「私、介護職だからいつもは世話出来ないし、お父さんは海外赴任しているから…情けない話だけど、全く知らない人より、昔から知っているほのちゃんにうちに来て欲しくて…!」
その切実な願いを私が断れるはずも無く、仕方なしに私のバイト先を教えて、そこから私を指名するようにお願いした。
…なるべく会わないようにしていたのに、自分から彼の家に行く様になるなんて、昔の私だったら大喜びだっただろうけれど、今の私と彼は違う。
恋にすっかり臆病になった女子大生と、いい加減なサレ男ニートなのだから。
「和真さん、そこどいて下さい。」
目の前でごろりと床に寝そべっていた人物に私…桃山穂香(ももやまほのか)は苛立ちの感情を露骨に出して言う。
「別にいいでしょ~今良い所なんだから。」
スマートフォンでトランプのゲームをしながら、こちらを見ずに答えるぼさぼさ髪で髭面の男…そのいい加減な態度に、思わず持っていた掃除機の吸引口をお尻にくっつける。
「んいっ!?ちょっとほのちゃん、地味に痛い!」
「どいてって言っているでしょ!」
怒りの言葉に渋々動いた男・黒田和真(くろだかずま)…そのだらしなさを見て、私は心の中で叫ぶ。
何でこんなのが、私の初恋の人なの!?
時を遡ると、大学在学中に巡り合った同じ学年の恋人と彼は卒業後結婚した。
その時は、向こうのお母さんから送られた年賀状に晴れ姿がきっちりと収められていて「二人とも綺麗ね~!」なんて呑気に見惚れていた母親がいなければ、私はその年賀状をくじが当たっている番号だったとしても、破いて捨てていただろう。
そのまま誰もが羨む様なさぞかし素敵な人生を送っていても、私には関係無い!と強く思いながら過ごしていたのだが、現実はそんな予想とはかけ離れたものになる。
和真の恋人が、浮気をしたのだ。
和真は大学に入って知名度のある大企業へ入社したものの、その忙しさから新婚生活は甘いものではなく、お嫁さんも働いて支えてはいたものの、共働きでストレスを抱え喧嘩する事が増え、寂しさが勝ってしまった結果…二人は二十六歳にして早々離婚する事となった。
「幸い子どもはいなかったから…残念な結果ではあるけどね。」
裁判が終わった頃に母に会いに来た和真のお母さんはそう話していたけれど、内心複雑だったに違いない。
そして、その傷が一番深い本人はといえば。
「ほのちゃ~ん、柿ピー無くなった、買ってきて~。」
これである。
「私が頼まれたのは掃除なので、お使いを頼むと追加料金が増えます。」
「そんなつれない事言わないでよ、おねが~い。」
離婚を経験して心がぽっきり折れたと言う様に会社を辞めて実家に帰ってきた彼は、親の脛齧り虫となってしまった。
普通なら両親から「早く働きに出ろ!」と言われる所だろうけれど、これまで真面目な人間だった和真がこの様な仕打ちを受けてしまい「まぁ、一年くらいなら良いよ。」とニートになる事を許してしまっている。
という事で、今彼は絶賛無職満喫中なのだ…そして、何故私がそんな男の元に来ているのかと問われれば。
「幼馴染のよしみで、汚部屋にハウスキーパーに来ているんだから…これ以上の温情は無い!」
元々大学生となりアルバイトを始めようと、掃除が好きな事もありハウスキーパーのバイトをしていたのだけれど、それを知っていた和真のお母さんからお願いされたのだ。
「ほのちゃん、申し訳ないのだけれど…うちにハウスキーパーとして来てくれる?」
何でも和真が実家に帰ってから、家が散らかる様になってきて、ご飯もゴミが増えるのにインスタント食品しか食べない時もあると、悩みを打ち明けられる。
「私、介護職だからいつもは世話出来ないし、お父さんは海外赴任しているから…情けない話だけど、全く知らない人より、昔から知っているほのちゃんにうちに来て欲しくて…!」
その切実な願いを私が断れるはずも無く、仕方なしに私のバイト先を教えて、そこから私を指名するようにお願いした。
…なるべく会わないようにしていたのに、自分から彼の家に行く様になるなんて、昔の私だったら大喜びだっただろうけれど、今の私と彼は違う。
恋にすっかり臆病になった女子大生と、いい加減なサレ男ニートなのだから。
