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御伽噺とは言わないが。外伝

「あー。」
徳治は自分の喉の調子を確かめる為に、声を出してみた。
少しかすれ気味だが、どうにか発音できている。
「…問題ないかな?」

「徳治!?」
朝起きてきて、フラフラと歩いている徳治を見つけて徳永は慌てた。
「お前風邪ひいてるから寝てろって言っただろ?」
「え…でも。」
徳永の顔の輪郭さえ不明瞭だったが、徳治は反論をした。
「今日は、おれが朝食の当番でしょ。」
「いいから!」
「でも…。」
「こういう時くらい休め、さもないと…。」
徳永が言いかけた時に、徳治は勢いよくくしゃみをした。

「へっ…くしょん!!」

勢いあまって徳治の顔は下を向いた。
そこから徳治の動きが止まった。
(…あー言わんこっちゃない。)
事の結末が見えてあきれながらも徳永は声をかけた。
「あの~。」
すると、下を向いていた顔がキッとこちらを睨みつけてきた。
「うっせぇ!」
いきなり大声を出したせいか案の定、徳治は咳きこんだ。
「あ~やっぱり?」
「ゴホッゴホッ…。」

人格が入れ替わったのには、実は理由がある。
普段、人格の入れ替えは徳治のお互いの意思があって成立する。
しかし、2つの魂が入っている躰に異変が起こるとお互いの意思関係なくコロコロ入れ替わってしまうのである。

「徳永、こいつすぐに寝かせろ。」
「あ、やっぱりやばい感じ?」
「…薬か医者を用意しろ。」
病気に罹っている時の独特な呼吸音をさせながら、徳治は自分の部屋へと帰っていった。

(…やっぱり、徳治には過保護だな、六兵衛。)
内心微笑ましく徳永が感じたところで、向こうからまた声が聞こえた。
「おい、布団が片付けられてるぞ!」
「あ~うん、今敷きに行くよ…。」
もう少し自分にもその優しさを分けてくれないかと思った徳永であった。
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