第一章
「そこまでだ、二人とも。」
音もなく、徳治の後ろを取り徳永は先ほどかざした数珠を徳治の首にかけた。
すると、数珠は意思があるかのように動き、徳治の首を絞めつけた。
「……ッ。」
徳治は数珠を外そうとカズの首から手を放し、自身の首にかけられた数珠に触ろうとしたが、数珠は徳治の手を弾いた。
「はいはい、もう喧嘩しないの。」
あくまでマイペースに落下したリーダーのムジナを仲間たちの方へ徳永は運んでいった。
「と、徳永…お前。」
「苦情だったら後で聞くから、しばらくそれで頭を冷やしなさい。」
低い声で徳治に言い放った後、徳永はムジナたちに話しかけた。
「さて、これで用事の一つは済んだかな?」
「「「「「………。」」」」」
「うーん、誰か答えてくれるとうれしいな。」
後ろで呻いている徳治をちらりと見ながら、徳永はまるで知り合いの人に話しかけるような態度でムジナたちに接してきた。
「…ジロ、お前が答えろ。」
さっき首を掴まれて、うまく話せない様子のカズはジロと呼ばれる二番目に大きいムジナに頼んだ。
「ああ。」
「うん、それで君たちの目的は初代和尚の魂をもらうことで合ってるよね?」
「そうだ、もっとも失敗したが。」
「でも、成功したらどうするつもりだったの?」
「それは――――」
言いにくそうにするジロにカズは構わないと言うように首を上げた。
「―――そこの狸と変わって、カズが徳行の魂と共に先祖返りとして生きるようにする為だ。」
その解答を聞いた時、どういった反応をすれば良いか分からない気持ちに徳永はかけられたが、一方で、苦しみながらも話を聞いていた徳治は仏頂面になった。
「そういった反応をするのもしょうがない。」
「…うん。」
とりあえず返事をして徳永は言葉を続けた。
「初代和尚の術は、血が繋がっているとはいえ俺たちにも実行できるかどうか難しいところがあるからな…。」
術の方法を記した書物はあるが、高度なものばかりで不可能なものが多いと徳永は語った。
初代和尚の魂と六兵衛狸の魂を持った者が、先祖返りなのである。
「まあ、徳治と入れ替わることが可能かは…」
「やるんだ!!」
少量の血を吐き、咳きこみながらカズが答えた。
「できないかどうかじゃない、やらなければ分からないことだろう!?」
カズは、重傷を負ってもなお眼光の鋭さに変化はなかった。
その様子を無言で見ていた徳永は静かに右手を挙げた。
ふわりと、徳治の首を縛っていた数珠が解かれ、徳永の右手へと戻っていった。
「………。」
またやるのかとカズはふらふらな状態ながらも四足で立った。
しかし、徳永は違うと言って、徳治の方へ顔を向けた。
「代わってくれる?」
「…このタイミングでかよ。」
「ここでだからだよ。」
「アイツができるとは思えない。」
「やらせるんだ。」
「ここはオレが…。」
「過保護もいい加減にしろ。」
ここまで言われて、徳治は押し黙った。
「しょうがねぇな。」
