このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第一章


あれからしばらく歩いて、獣道もだいぶ草木で複雑に入り組んで分からなくなりそうな位置にたどり着くと、徳永が話しかけてきた。
「ところで、さっき寺でも言ったが目的忘れていないだろうな?」
「ああ…。」
徳治はうなずいて、目的をこう述べた。
「あいつらをしばらく山から降りてこられないくらいに痛みつければいいだろ?」
「はい、暴力反対。」
すかさず、徳永は訂正を入れた。
「お前先祖返り何度目だよ、そのぐらい理解できてるよな?」
「…どっちかっつうと、その内容はアイツがやるべきことだろ。」
「………。」
「全く、いつも覚えているのはオレだけで、あのクソ坊主はいつもこれっぽっちも憶えてねぇんだから…。」
ぼそりと小声で悪態をついていた。
「…ま、あいつが見習いのうちは、すまないが」
「皆まで言わんでもいい。」
徳永の言葉を遮り、徳治はまた歩き始めた。

しかし、それは数歩で止まる。

眉間のしわを一層厳しく刻んで、徳治はゆっくりと周りを見渡した。
「徳永。」
「分かっている。」
徳永も体の余計な力を抜き、集中力を高めていた。

その場から動かず、視えない何かと睨み合いしている状態だったが、複数の物体が二人に飛来してきた。

飛来し、二人に襲いかかったものは、さっきの火の玉だった。

「うわっと!」
「………。」
次々に襲いかかる火の玉に徳治と徳永はただひたすら避けていた。
「ちょっと、徳治君これどうすればいいの!?」
「静かにしろ、そして当たれ。」
「当たったら燃えるよね、消し炭になるよね??」
「…本当に危機だと感じる奴はそんなに茶化した助けなんて叫ばないだろ。」
そうこうしているうちに、徳永の法衣の裾に火が燃え移った。
「あちっ!!」
火はみるみる内に法衣に燃え広がっていった。
「…チッ。」
その様子を見て、面倒くさそうにしていた徳治だが、錫杖をシャンと一振り、そしてそのまま徳永の燃えている部分の法衣に強く叩きつけた。
「痛い!」
反射で悲鳴をあげ、弁慶の泣き所を強打された徳永は地面に四つん這いになった。
それを徳治は無言で冷ややかな目で見ていた。
「…そんな、目で見なくても。」
視線と無言に耐えかねて、立ち上がった徳永はあることに気付く。
「あれ、法衣が全然燃えてない、それに火傷も負ってない…。」
「うるせぇ、幻術だってこと分かっていただろ。」
「あー、うん。」
法衣を見ると泥のようなもので汚れているだけだったが。
「…これって、やっぱりアレだよね。」
「ああ、糞だな。」
「だからもっとオブラートに包んだ言い方にして…。」
これ洗濯で落ちるかなと割と本気で落ち込んでいる徳永だった。

クスクス…

周りの火の玉が消え、今度はひそやかな笑い声が聞こえてきた。
「…ふん。」
「あー、あんまり刺激しないようにね?」
言っても無駄だろうけど、とあきらめ半分で徳永は徳治に忠告をした。
「当たり前だ。」
すると錫杖を今度は地面にトンと突くとそこを起点として風が起こった。
草が揺れ、木が揺れるその風が吹き渡り、徳治たちの周りにはゆらりとある生物が5匹姿を現した。

「いくら浮かれ気分になる春だからって、オレに幻術で勝てるとか勘違いしてんじゃねーぞ?」
邪悪な表情で徳治は生物たちに笑いかけた。

「脆弱なムジナどもめ。」
5/13ページ
スキ