第三章


その知らせが入ったのは、今日の午前中だった。

「紗枝が帰ってこない?」

怪訝な顔で徳治は、徳永の言葉を聞き返した。
「ああ…。」
いつも朗らかな顔をしている徳永も、表情を強張らせていた。
「昨日は学校に行ったらしいんだけど、その後帰ってこなかったって。」
「友達の家に泊まっているとかは?」
「残念だけど、親御さんに言ってなかったらしいし、紗枝ちゃん不登校気味だから友達とかもいないって。」
「…警察は?」
「届け出は出したらしいよ。」
「………。」
少し無言で考えた後、徳治は「ちょっとごめん。」とその場から移動した。徳永も追いかけようとするが、それを徳治は目線で制した。

徳治が移動した先は、包安寺の蔵の裏だった。
「…ハァ。」
いないことを確認すると、溜息が一つ零れる。
そして、とある昔の光景が蘇ってきた。

ここで彼女は、一人泣いていた。

誰にも気づかれないように、隠れて声を殺し、歯を食いしばって。

何がそうさせているのか、ずっと話してくれなかった。
自分にも言えないことは山ほどあるし、聞かない方がいいことがあることも世の中には多くある。
ただ、分かるのは家族が原因であることだけ。

「行くか。」
行先は言うまでもない。
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