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番外編


「よぉ。」

予定の日と時間に包安寺にジロとゴウが行ったところ、徳治にこう挨拶された。
「…お兄ちゃんじゃない。」
様子が違うことを見抜いてゴウはジロの後ろに隠れた。
「何故?」
「オレが奴に変わってくれと頼んだのさ。」
険しい顔で言われてジロは少し身構えた。
「あ〜大丈夫、内容聞いたけど特に荒事とかじゃないから。」
徳治の後ろから徳永がひょっこりと顔を出した。
「それに君たちに徳治が何かするなら俺が止めるからね〜。」
「うるせぇ。」
悪態をついてから徳治はジロ達に向き直った。
「…お前らの親玉は何してる?」
「カズなら、修行中だ。」
「ケッ、御苦労なこった。」
「…誰のせいでこうなってると思う。」
静かに告げるが、ジロの目つきは鋭いものだった。
「さぁな、もっと大怪我になっていたかもしれないから、御の字じゃねぇか。」
「お前…。」
「あ〜ストップストップ。」
徳永は手を叩いて二人の注意をこちらに向けた。
「徳治く〜ん、そんな殺伐とした話じゃないでしょ?」
「てめぇが仕切るんじゃねーよ。」
「このままじゃ穏便にいかないでしょ〜。」
数珠をちらつかせながら、徳永は代弁した。

「カズくんの怪我の具合はどうなっているのってこと。」

「…それは、本当にそいつが思っていることなのか?」
「わぉ、やっぱり信じてもらえなかったね。」
苦笑混じりで言う徳永の横で徳治は眉間にしわを寄せた顔でそっぽを向いていた。
「何も反論しないってことは本と…。」
徳永の横っ腹を徳治が殴った。
「………地味に痛い。」
「静かにしろ。」
そしてジロの方を睨んだ。
何も言ってこないので、どうやら返答を待っていると感じたジロはとりあえず伝えた。
「お陰様で傷はもう癒えた、例のあの池の効力だろう。」
「そうか…。」
何処か別の場所を徳治が眺めていることに気付き、ジロはその視線の先を追った。
「………!」
するとそこには、歴代の先祖返り達が眠っている墓の方へ視線が注がれていることを知った。
(…約束か。)
「疑って悪かった。」
「あ?」
「あと、心配をしてくれてありがとう。」
ジロは謝罪と感謝を伝えた。
「………。」
「どうした?」
何やら徳治の様子がおかしいと思い、徳治のいる方へジロは顔を向けた。

そこには湯気が出そうな程顔を真っ赤にし、口を開け閉めしているなんとも形容し難い表情をした徳治がいた。

「あ〜この状態の徳治久々に見るかも。」
にやけた表情をして、徳永はジロに説明した。
「この子、憎まれ役が多いから正面から自分に対しての感謝とか賛辞とか言われるとどんな対応していいか分からなくてこんな顔しか出来ないんだよ。」
そこまで言うと徳治は徳永の方を殺意のこもった視線で睨みつけて、今度は腹に蹴りをいれた。
「テメェふざけるのも大概にしろよ!」
「ちょっと、おじさんもう若くないから手加減してよ!」
「余計な一言を言うからだ、阿呆!!」
バタバタと追いかけっこが始まる中でジロとゴウはぽかんとそれが終わるまで見つめていた。
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