第二章


「若いって恐ろしいねぇ~。」

二人の車を見送ってから徳永はそんなことを呟いた。
「高田くん、あの事本当に憶えていないの?」
徳治に質問を投げる。
「ちゃんと聞いたから憶えていないと思うけど…。」
「聞くってお前…。」
「仕方ないじゃん、流石に記憶を消すような便利な術なんてないよ。」
でもと徳治は話しを続ける。
「あの答えを聞いてなんか分かった気がする。」
「何が?」
「高田さんが、裏山に入れた理由。」
二人は寺に戻り、応接間の後片付けをする。
「アイツが言うには、山神様の導きがあったんだろうって。」
「あ~あの…。」
裏人格の徳治のイラついた顔が見えるようだった。
話しこそできはしないものの、この裏山の山神様はとても気まぐれらしい。
「加えて、高田さんあんな感じにこの土地に惚れ込んでいるからそれなら綺麗な場所を案内してもっと好きにしてやるよってことらしいよ。」
「…何それぇ。」
理由がとてもどうでもいいとでも言いたくなるくらいのレベルで徳永は拍子抜けした。
「いっそ、お父様みたいに怖がってトラウマみたいになってくれればいいのに…。」
晶は、秀と同じ年くらいにこの山に登ったことがあった。しかし、その時は先代の先祖返りがきっちり対応して恐ろしい幻術を見せて事なきを得た。
おかげで晶は裏山がどんなに恐ろしい場所かを一部知ることとなり、裏山の事について過剰とも言える畏れを抱いている。
「恐れているおかげで、まるっきり俺たちに裏山の管理は何も言わないもんね~。」
あ~あと溜息をつく徳永を見て、徳治はくすりと微笑した。

「次期市長候補は手強い…かもね。」

徳治の言ったことは正しく、秀の錫鍵村通いは以前よりも増して多くなった。
9/9ページ
スキ