第二章


「阿呆め!!」

素早く身支度をしながら徳治は怒鳴りつけた。
「だってぇ~。」
「だっても糞もねぇ、気を抜きやがって…。」
いつも以上に眉間に皺を深く刻み、歯をむき出しにした厳しい表情で徳永に怒りを向ける。
「ごめんごめん、でもおかしいな…。」
「何が。」
「いや、あそこの門っていつも閉まってあることを確認してあるのに、今日に限って忘れるなんて…。」
「………。」
その言葉を聞き徳治は少しだけ動きを止めたが、すぐにまた動き出す。
「…とにかくあの役人の息子だ、これからパシリになってもらわなきゃ困る。」
「わーお、正直。」
「てめぇだって同じだろうが。」
「あはは。」
あくまで笑いで答える徳永を睨みつけて、徳治は小言を漏らした。

「まぁ、あいつに助ける価値があるのかどうか、疑わしいところはあるがな。」

「ぎぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」
声帯が壊れてしまうのではないかと疑うくらいに秀は割れるような悲鳴をあげて逃走していた。
(いやいやいやいやいや、なんだよアレ!?)
一通り憶えていた山の危険への対処法などはとうに忘れ、自らを守るためにただ走っていた。
その秀を追いかけているものは――――――

いわゆる熊だった。
しかも二頭。

(熊って普通一体しか遭遇しないはずじゃないか、よく知らないけど!!)
ニュースとかでよく見るものでは、遭遇するのは一体が多く、あったとしても親子だとかそういったものではないかと考えを巡らすが、向こうが何か叫び声をあげてきた。

「か、勘弁してくれ!!」

人語が通じないのは理解しているが、ついこう話しかけて秀はすぐ左にあった洞窟を見つけてそこに逃げ込んだ。
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