第二章


市の中心部から車を走らせること二時間。

黒い高級車を操り、整備されていない道を何度も通過して、同じ市内なのに秘境と呼ばれる鈴鍵村へと、秀は辿り着いた。
「毎度毎度手間がかかる…。」
適当なところに車を置き、秀はここに来るといつも向かうところへ急いだ。
「あら、秀さんかしら?」
向かっている途中に地元住民の人に会った。
「はい、そうです。」
こんにちはと政治家必須の人に好かれる笑顔を秀は瞬時に作った。
「こんなところまで…。」
「いえ、ここも伊斗市の一つですから。」
握手を求められ秀は快諾した。
「ご苦労様です、選挙頑張ってください。」
「いえいえ、何か困ったことが起こったらいつでもお問い合わせください。」
しかし、それを聞いた村人は少し困った表情になった。

「う~ん、お気持ちは嬉しいけれど、包安寺を通してからにしますね。」

その後も村人たちに遭遇して同じような挨拶をすると全員決まった反応を示した。

「ごめんな~、あそこのお寺通さないと何も言えねぇや。」
「わざわざありがとう、でもお坊さん達がいるから安心よ。」
「あのね~、お坊さん達いろいろやってくれるから、大丈夫!!」

(こ れ だ 。)
表情には全くと言っていいほど出さなかった秀だが、内心は怒りの感情が渦巻いていた。
(なんだよ、坊主坊主って、いまだにあんな御伽噺を信じて、坊主どもに頭を下げているなんて馬鹿じゃねぇの!?)
市長である父の跡を継ぎたくて、各市町村を直々に周り歴史資料館や図書館等に行ってまで自分の土地を把握しようと努力をしてきたが、ここの風習だけは本当に理解できない。

「…ふぅ。」
ひとまず村人への挨拶回りを終えて、ラスボスである包安寺の坊主のもとへ急いだ。
(とりあえず、あの物語の狸のように化けの皮を今日こそ剥がしてやる。)

「あ、高田さんいらっしゃい。」

境内で竹箒を使って掃除をしているこの寺の坊主の一人である福釜徳治に会った。
「こんにちは、徳治君。」
また業務用スマイルに切り替えて、秀は対談するべき人物の名前を呼んだ。
「徳永さんはいるかな?」
「いますよ。」
どうぞ、おあがりくださいと案内された。

「お、いらっしゃい。」
最初から会った時から全く変化がない、秀が最も苦手と感じる人物が現れた。
「…こんにちは。」
もう何度も会ってはいるが全く変化を感じさせない外見に何を考えているか理解できない笑顔を振りまく、胡散臭い男。

福釜 徳永

(何度も、何度も会っているのに、こいつだけは本当に苦手だ…。)
そう感じるものの、秀には退けない理由があった。
(でも、この村をこのままの状態にしておくのはもったいない。)
秀は、勇んで徳永との会談に臨んだ。
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