第二章
「何でだよ、父さん!?」
とあるビルの一室で、こんな声が響いた。
「だってお前あそこは…。」
「それは何度も聞いた、でもたかが御伽噺だろ?」
声を荒げている人物は、急いで身支度をし始める。
「おい、お前また!」
「うるさいな、次期市長確定の俺が行くんだ、今度こそ…。」
ドア付近まで来て父親に宣言する。
「錫鍵村を開拓してみせる!!」
錫鍵村は、もともとは一つの村として成り立っていたが、人口が減少してきた為に十年程前に近隣の村や町と合併した。
その名前は、伊斗市(いつし)である。
つまり、徳治達の住所は“伊斗市錫鍵村”となっている。
そして、先程騒いでいた人物達は、伊斗市の役人だった。
一人は、現段階で将来の次期市長第一候補と言われる人物。
高田 秀(たかだ ひで)
もう一人は、現市長。
高田 晶(たかだ あきら)
そう、秀は市長である晶の一人息子である。
今回はこの秀を主役とした物語。