第4章
理想郷。
読んで字の如く、人の理想を集めた理想の都。
曰く、食べ物や金や銀が豊富。
曰く、清い水が無限に湧いている。
曰く、平和で安全な場所。
人や住んでいる島、価値、文化によって、伝承は様々に形が変化する。
けれど、共通する所が一つだけあった。
「理想郷に導く4つの宝石…それが鍵として必要になるらしい。」
船長に改めてこの船の最終目的について、今マツリは聞いていた。
次の目的地が、これまで訪れていた人の住む島では無く…無人島と言えるところだと伝えられ、まだ海賊達の目的を全ては知らないマツリが船長の部屋で教えて貰っている。
マツリのこの旅での目的は「自分と同じ三ツ目を持つらしいミツメ族に会う事。」であり、船長たちのこれまでの旅で出会った事が無いことから、ひょっとしたら理想郷に住んでいる一族かもしれないと話された。
「星空の雫、樹木の愛し子、焔宿す溶岩、深海の秘石…名前だけは伝えられているが、どんな宝石なのかは明記されていない。」
雲を掴む様な話だ、とマツリは改めて思う。
「明記って、船長…理想郷ってどこの本に書かれていたものなんですか?」
そこを指摘され、船長は「ああ。」と話してなかったと頷く。
「昔…ガキの頃に読んだ古い本にな。」
最初は俺も御伽噺だなと思ったよ、とマツリが考えていることを見透かして告げる。
「でもな、それから海に出るようになってそれまで当たり前に伝えられているその話が他でも伝えられているのが分かった…最初は夢のある話だから、皆ロマンが好きでそれを求めていると思っていた。」
どういうことなのだろうか、とマツリは首を傾げていると今一度船長に問われた。
「マツリちゃんは…ミツメもだけど、この話…知らないんだよね?」
「…はい。」
「オレも知らねーな。」
二人とも同じ返事を受けて、船長がにやりと笑う。
「実はな、ある一定の年齢…マツリちゃんたちくらいの年の子は知らない子が多いんだよ。」
いまだに傾げた首がそのままな彼女に船長は事実を掲示する。
「俺が読んでいた本も今は売られてない、伝説を知っている奴も少なくなった…つまり、俺の憶測が正しければ。」
世界が、理想郷の存在を隠している。
「…え、でも単純に創作の物語として考えられた結果、飽きられて無くなったのでは…?」
それは無い、と船長は頭を振った。
「俺はやんちゃなガキだったが、本の虫だったんだ…よく好きなページ破って親を泣かせたがな。」
泣かせたという割にどこか胸を張って話しているので内心(今も昔も変わりないんだなぁ…。)とマツリは考える。
「船長、全く成長してないな。」
「褒め言葉として受け取っておく。」
代わりにミツメが本人に話すも、全く気にも留めないように船長は一冊の本を出す。
「これが理想郷について記してある本で、この船にある中で一番古いやつだ。」
なるほど確かに、その表紙も中身もぼろぼろで悪環境とも言える海の上で形を保っていられたのが不思議なくらいのレベルの本だった。
「…これ、出版年間違えてないですよね?」
「お、サナの授業が役に立っているな。」
これまでマツリは月日や年数を気にすることなど無かったのだが「それは色々不便よ!」とサナに言われ教えて貰った。
「百年前…本当に?」
驚くマツリを見て満足そうに彼の口角が上がる。
「それだけ前に出版されて、俺やサナがガキの頃には教えられていた物語が…ある時を境にして何故消されることとなったのか。」
ちなみに出版社関係にも当たってみたが、収穫は0に等しいものだったらしい。
「世界が秘匿するものを暴くっていうなら、それはもう悪に近いと思ってな…だから俺たちは自称海賊なんだよ。」
改めて彼らが実行しようとしている事の大きさを知り、怖いと思ってもおかしくないはずなのに確かな胸の高鳴りをマツリは感じていた。
読んで字の如く、人の理想を集めた理想の都。
曰く、食べ物や金や銀が豊富。
曰く、清い水が無限に湧いている。
曰く、平和で安全な場所。
人や住んでいる島、価値、文化によって、伝承は様々に形が変化する。
けれど、共通する所が一つだけあった。
「理想郷に導く4つの宝石…それが鍵として必要になるらしい。」
船長に改めてこの船の最終目的について、今マツリは聞いていた。
次の目的地が、これまで訪れていた人の住む島では無く…無人島と言えるところだと伝えられ、まだ海賊達の目的を全ては知らないマツリが船長の部屋で教えて貰っている。
マツリのこの旅での目的は「自分と同じ三ツ目を持つらしいミツメ族に会う事。」であり、船長たちのこれまでの旅で出会った事が無いことから、ひょっとしたら理想郷に住んでいる一族かもしれないと話された。
「星空の雫、樹木の愛し子、焔宿す溶岩、深海の秘石…名前だけは伝えられているが、どんな宝石なのかは明記されていない。」
雲を掴む様な話だ、とマツリは改めて思う。
「明記って、船長…理想郷ってどこの本に書かれていたものなんですか?」
そこを指摘され、船長は「ああ。」と話してなかったと頷く。
「昔…ガキの頃に読んだ古い本にな。」
最初は俺も御伽噺だなと思ったよ、とマツリが考えていることを見透かして告げる。
「でもな、それから海に出るようになってそれまで当たり前に伝えられているその話が他でも伝えられているのが分かった…最初は夢のある話だから、皆ロマンが好きでそれを求めていると思っていた。」
どういうことなのだろうか、とマツリは首を傾げていると今一度船長に問われた。
「マツリちゃんは…ミツメもだけど、この話…知らないんだよね?」
「…はい。」
「オレも知らねーな。」
二人とも同じ返事を受けて、船長がにやりと笑う。
「実はな、ある一定の年齢…マツリちゃんたちくらいの年の子は知らない子が多いんだよ。」
いまだに傾げた首がそのままな彼女に船長は事実を掲示する。
「俺が読んでいた本も今は売られてない、伝説を知っている奴も少なくなった…つまり、俺の憶測が正しければ。」
世界が、理想郷の存在を隠している。
「…え、でも単純に創作の物語として考えられた結果、飽きられて無くなったのでは…?」
それは無い、と船長は頭を振った。
「俺はやんちゃなガキだったが、本の虫だったんだ…よく好きなページ破って親を泣かせたがな。」
泣かせたという割にどこか胸を張って話しているので内心(今も昔も変わりないんだなぁ…。)とマツリは考える。
「船長、全く成長してないな。」
「褒め言葉として受け取っておく。」
代わりにミツメが本人に話すも、全く気にも留めないように船長は一冊の本を出す。
「これが理想郷について記してある本で、この船にある中で一番古いやつだ。」
なるほど確かに、その表紙も中身もぼろぼろで悪環境とも言える海の上で形を保っていられたのが不思議なくらいのレベルの本だった。
「…これ、出版年間違えてないですよね?」
「お、サナの授業が役に立っているな。」
これまでマツリは月日や年数を気にすることなど無かったのだが「それは色々不便よ!」とサナに言われ教えて貰った。
「百年前…本当に?」
驚くマツリを見て満足そうに彼の口角が上がる。
「それだけ前に出版されて、俺やサナがガキの頃には教えられていた物語が…ある時を境にして何故消されることとなったのか。」
ちなみに出版社関係にも当たってみたが、収穫は0に等しいものだったらしい。
「世界が秘匿するものを暴くっていうなら、それはもう悪に近いと思ってな…だから俺たちは自称海賊なんだよ。」
改めて彼らが実行しようとしている事の大きさを知り、怖いと思ってもおかしくないはずなのに確かな胸の高鳴りをマツリは感じていた。