第3章
「はい、という事で…目標金額に届いたわよ~!」
大道芸を開催し、微々たる収益を得ながら過ごしたその数日後。
サナから夕食にこのような発表があった。
「これなら暫く贅沢さえしなければどうにかなるわね…。」
「せんせー、贅沢ってどれくらいの規準ですかー?」
「変な骨董品とかインチキ道具とか買わない事よ、船長。」
いつもの茶番めいたやり取りが復活して、どことなく船の雰囲気も和らいだものとなる。
「それでは、お待ちかねの時間…一人ずつ呼び出すから待ってちょうだい。」
そう告げるとコートの内側から小さな袋を出し、まずはメソドの名前から呼ぶ。
(もしかして…あれ、なのかな。)
自分の番がいつ来るのか待っていると、すぐに「マツリちゃん。」とサナから呼ばれる。
「は、はい!」
「よく頑張ったわね、お疲れ様。」
労いの言葉と共に出されたのは…ずしりという重さとともにカチャリと中身の物たちが擦れ合う音。
「記念すべき初任給よ、使い方は貴方に委ねるけれど…無駄遣いしちゃ駄目よ。」
丁寧に渡され、昔ただ貰うだけだった小遣いとは違う重みを感じる。
「大切に、使わせて頂きます。」
体はまだ未成熟と言われも仕方ない年だろうが、確かに今島を出て大人に近付く一歩を踏み出せた気がしたマツリだった。