第3章
海賊達の言葉通り、船長の芸は最後の演目にして更に客が集まる結果となった。
終わりに船長が帽子を取って頭を下げると、中から鳥が飛び出してきてあたふたしている様子を見せ、更に笑いを誘う。
「本日はお忙しい中、お立ち寄り頂きありがとうございました!」
客の前で挨拶をし、各自帽子や箱を持ってチップ回収へ赴くなかでマツリは一人テントの後片付けをしていた。
(明日もやるって言っていたから…今日上手く出来なかった所を見直して明日に備えないとなぁ。)
ごそごそと散らかった辺りを袋に詰めていると、小さな音が耳に届く。
「あ、あの…。」
「ん…あ、はい!?」
微かに聞こえた声に驚いてうわずってしまうも、声の主へ顔を向ける事が出来た。
小さな彼女は、マツリの様子にびくりと両肩を上げてしまったようで、テントの入り口の端へ隠れてしまう。
「ご、ごめんね…大きな声を出して…。」
大袈裟な反応に驚いてしまったのだと気付いたマツリは、入り口まで歩き彼女の姿を見る。
「何か御用だった?」
小さなその女の子は、抱きかかえたその大きなぬいぐるみのウサギで顔を隠しながらもごもごとと口を動かす。
「…明日も、ここで劇やる?」
「うん、やるよ!」
また来てくれるのだろうかとそう思い笑顔を見せると、彼女はぬいぐるみに顔を埋め耳まで赤くして絞り出すような声が出てきた。
「………今日とっても楽しかったの、だから明日も楽しみにしているね。」
これあげる!と小さな手がマツリの手の内側に何かを握らせ、そのまま走り去ってしまう。
何をくれたのだろう、とその手を開く。
「…明日も待っているね。」
少しのお金と共に摘んだばかりの小さな花がそこに置かれていて、マツリの表情は自然と柔和なものとなっていた。
