第3章
それから、時間が経過し遂に当日がやってきた。
程々に人が集まるような島に立ち寄り、広場で場所を確保して見世物の準備を彼らはしている。
「ここでやりますのでお時間がある方は是非~。」
既に衣装に着替えたサナが、そこに通る人たちへチラシを配っていた。
煌びやかな布地に、きっちりとしたタキシードを少し着崩した服は、美形なその容姿もあり特に女性を惹きつけている。
「はい、ありがとうございます。」
にこやかに微笑するだけで、向けられた女性たちは表情がとろけているその様子を同じくチラシを配っているマツリは目を丸くして見ていた。
(…あれも、サナさんの素なのかな。)
聞きたいような、聞いてはいけないような、そんな事を思っていると。
「あの、チラシくれない?」
「あっ、すみません!」
目の前に来ても渡してくれないので、その男性は待っていたようだった。
「子どもと見に来たいんだけど。」
「どなたでも大丈夫ですよ。」
そう、とその男性はすぐに去って行く。
(ふ、不自然じゃなかったかな…。)
終わった後なのに、自分が挙動不審ではなかったか気になったが、足をつんつんと触れられ考えが霧散した。
「きんちょーしてるね。」
「が、ガーナちゃん…。」
流石にばれてしまうのか、ガーナはにやにやとこちらを見ている。
「分かるよ~はつぶたいって心臓ばくばくするよね。」
「うん…。」
「でも、ここまで来たならだいじょーぶ。」
きゅっとガーナはマツリのチラシを持っていない方の手を両手で握り、そこに息を吹きかけた。
「これね、おまじない。」
効くんだよ、と笑うとそのまま彼女はマツリから離れる。
(…元気、貰っちゃった。)
吹きかけられたその手は、いまだに冷たかったがその中心はほのかな熱が戻ってきた。
