第3章
ちちち、ぴぴぴ…と海鳥が船へと集まってくる。
「はーい、こっちこっち。」
のんびりと彼らを呼んでいるのは褐色の少女だった。
「…ガーナちゃん、植物以外にもお話出来たんだね。」
そうだよ~とガーナは寄ってきた海鳥たちと視線を交わしながら答える。
「お魚さんたちとは何故か出来ないけれどね…。」
口を動かしながら、寄ってきた鳥たちを選別しているようだった、曰く「これから必要になる子たちだから。」と話されるが、それ以上は言ってくれない。
「大丈夫、島にあがったら分かるから。」
楽しみにしててよね!と念を押されて別の所へと行ってしまった。
他の海賊たちの所へ行こうとも思ったが、各自サナのあの呼びかけからいつもとは違う行動を取っているようで、あまり見かけない。
「…あの鳥さんたちを売り物にする、とか?」
いやいやと浮かんでしまった悪い考えを振り落とし、今一度サナに話しを聞こうと透視能力で探す。
「おいおい、娘よ…能力の無駄遣い…。」
「喧しい。」
親気取りの第三の目に注意されながらも、サナを外の甲板から探すと「ん…?」と意外な光景を目にすることとなった。
とっとっと…
リズミカルに宙を舞うカラフルな二つのマラカス。
しゃかしゃかと鳴りながら双方の手の元へと行き来する。
「久しぶりだけど、やっぱり腕は鈍っていないわね~。」
「…口動かす程には余裕みたいだな。」
機械的だったその軌道は徐々に大きくなってゆき、マラカスを敢えてぶつけさせ二人の手元へと戻った。
「す、凄い…!」
鍛錬室にサナがいることを透視で確認したマツリは甲板から移動し、その光景を入り口で見て思わず呟いてしまう。
「何だ、見ていたのか。」
同じように中で見ていたノイが声を掛けてくれた。
「はい…途中からですけれど。」
「あいつら投げるのが得意だからな、ナイフとかも投げ合う。」
毎度の事ながらよく息が合うもんだ、とノイも感心しているようでその視線は二人に注がれている。
「やだ~あんまり見つめられちゃうと…食べちゃうわよ♡」
「そのふざけ癖はどうにかなんねぇのか…。」
動きの確認が終わったのか、サナとメソドも二人の近くへ寄ってきた。
「マツリちゃんも魅了されちゃった?」
「あっはい!」
嬉しいわ~と微笑みを向けられると、メソドが声を上げる。
「…それで、君は何をやるの?」
降って沸いた話題に、少女は頭に疑問符を浮かべた。
率直に「何をやるとは?」と疑問を口にしてみると、ノイとメソドが目を丸くしてそのままサナにその目を向ける。
「…言って無かったのかよ。」
「その内分かると思って♡」
その企むような悪戯っ子の笑みに、何だが良くない雰囲気だと直感的に感じた。
「というか、技術より先に衣装の方をやりたくて~。」
「…ただの趣味の押しつけじゃ」
さぁさぁこっちの練習も終わったし~とサナはマラカスをノイに押しつけ、マツリの手首を優しく、しかし離す意思は全く無い手が包み込む。
「という事で、付き合ってね?」
「…逃げないので、そこまで圧力掛けなくていいですよ。」
後ろの二人を見ても「諦めろ。」の目線が痛い程理解出来て、マツリはすぐに白旗を上げた。
