第1章(前編)
「今日はどうだった?」海賊達がまた船に戻ったのを見届けるとマツリはさっき海賊達がいた八百屋の主人のところへ聞きに行った。
「広場で掲示板を見ていたよ。何か一瞬物騒な事言いかけてたけど、特に被害はなかった。」
「そう…。」
「今日は結構買い物してたから明日辺りにはもう船を出しちまうんじゃねーか?」
「本当!?」
「おう、今日は昨日より大量にお買い上げしてくれたからな☆」
「そっか…。」
ここでやっとマツリは安堵する。
「ようやく休めるな、いつもごくろうさん。」
「ううん、もともとじっちゃんがやってた事だしね!」
「でも、やっぱりムマジさんの娘だなぁ。あの人が現役だった頃を思い出すよ。」
その言葉を聞くとマツリは嬉しそうななおかつ恥ずかしそうな顔をした。
「…そうかな?」
「ああ、十分にやれてるさ。」
「エヘヘ…。」
「あんたっ仕事!」
と奥から彼の妻が放つ怒鳴り声が聞こえた。
「おう、そうだった。」
「ありがとうね、おじさん。」
「気をつけてな!」
「うん!!」
パタパタとマツリは足音をたてながら走って行った。
「…マツリちゃん?」
「ああ、海賊達の事を聞きに来た。」
「………。」
妻は少し顔を曇らせた。
「…オイ、まだ」
「分かってる、分かってるわ…でもね私は」
「それ以上は言うな。」
と鋭く主人が咎める。
「…ごめんなさい、悪い事を言おうとしたわ。」
「……本当なら俺だってお前と同じ立場だったと思う、だけど俺達はもう他人じゃない。」
八百屋の主人は噛み締めるようにこう言い終えた。
「家族なんだ。」
