第2章


船長に案内され、たどり着いた場所はそれまでの光景とは異なったものとなっていた。

(空洞…?)

それまで似たような作りの部屋や廊下を巡っていたのだが、そこは建物の中心らしきところがぽっかりと海底深くまで空いている。
マツリの瞳でも底は窺い知れなくて、まさかここを潜れというのだろうかという不安に駆けられた。
重力が無い水中のはずなのに、崖に立たされているような気分になっていると、船長は自身が持っていた簡素な肩掛けバッグから何かを取り出す。
(…何だろう。)
そして、その穴の下に向かって粉のようなものを振り落とした。
きらきらと僅かな光の反射を受けて、粉たちはゆっくりと下へ、下へと降りてゆく。
全部使い終わったのか、船長はそれが入っていた布袋をまたバッグへと仕舞う。
何をしたのか、ジェスチャーでもいいから聞こうと考え、マツリは彼に歩み寄ろうとする。

瞬間。
唸るような地響きが、その場で響き渡った。

このタイミングで地震!?と思わず体をかがめたのだが、それにしてはその揺れは長く、異変を感じるのに遅くなってしまった。
(…長い?)
その揺れはむしろ徐々に強くなってゆく。
顔を上げると、目の前にいる船長は全く動じる事無く目の前の穴の底を眺めている。

視線を追うと、やっとそこで答えを見つけた。

この建物は、神殿である。
加えて、今いるこの場所は空洞となっているが。
それは何かが内側から抉って出来たような、そんな穴となっている。

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!

下から伸びてきたそれは、圧倒いう間にマツリと船長の視界全部を占領した。

素早い速度で穴の下から上昇していったそれを、初めの内は正体が何なのか全く分からなかった。
というより、マツリ自身が混乱に陥っていた。

それもそのはずで。
目の前のものは、一気に視界を埋め尽くすくらい巨大な物体であり、そして動く。
目を離した隙にこちらに襲ってくるかもしれない、そう考えると体の力を入れようとするが、思うようにいかない。

すると。
くい、と船長が右手の平をこちらに向けて振ると、そのまま前へ進んでいった。
(…え!?)
慌てて止めようとしたが、するりと躱され船長は物怖じせず、その物体へと近づいて行く。
何をするのか、自分は見ているだけしかできないのか、必死になって考えてはいたが、もとより考えるより体が動く性質のマツリは動けない。

(何を…するつもりなの?)

悠々と泳ぐその男の体は、もう巨体に触れるところまで移動していた。

巨大なそれに近づいた船長は、しばらくその肌らしきところに触れて何かを確かめた。
下に下にと泳ぎながら同様の動きをするので、マツリはそれが何かを探しているように思えてきた。
(もしかして…これが、宝?)
目の前の巨体は、先程の船長の粉に誘き寄せられたのだろうか全くそこを動かない。
しかし、時間の経過を自覚したのか、のったりと元の場所へ戻り始める。
それが分かったのか船長もすぐにするりと戻り、何かもの言いたげなマツリの視線に目だけ笑って「船に戻ろう。」とジェスチャーを送ってきた。
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