第2章
賑やかな少女たちが居なくなり、風呂場は急に静かになった。
「後でマツリに渡すか。」
渡しそびれたレモネードを見つめていたが、サナから言葉が掛けられる。
「ガーナちゃんの分も作ってあげて。」
おう、と答えると美味しそうに口を付けるサナにノイは話しかけた。
「…あんま、いじめてやるなよ。」
「やーん、ひっどーい。」
そんなつもりは無いのに、とわざとらしい言葉にため息を吐くと本題へ移る。
「実力は測れたのか。」
ノイがサナから連絡を受け取った時には既にサナはマツリが付いてきていることを把握していた。
「知りたかったから、ね。」
焦らす様な言葉に顔を睨みつけるがそれでも余裕たっぷりの顔で受け流す。
「マツリちゃんは、信用できるわ…素直過ぎるのが仇にならないか心配なくらいに。」
「まぁ…アイツは真っ直ぐだよな。」
「分からないのは、目玉の方。」
その言葉にノイは閉口する。
「マツリちゃんは首の傷はわたしがなまくらを渡したからって思っているけれど、初めから犯人が当てていた首の位置は、恐らくズレていた。」
「…相手は首を絞めるだけの素人じゃねぇのか?」
首を横に振りその拍子で髪に滴っていた雫が舞い、湯に波紋を広げた。
「何度も殺めてきて、今更首の構造が分からないことは無いと思う…腕から抜け出した辺りは彼女だけの力だと思うのだけれど。」
小さな齟齬。
そこに美形は着眼する。
「どこまで協力してくれるのか…分かりかねるわ。」
だから、マツリには信用はまだしないと告げた。
その額に三つ目が居たから。
「あの目玉がわたしたちに対してどう思っているのか…そこが分からない。」
腹黒、考えるのが億劫になったのかノイは言葉を投げた。
しかし、こんな自分を見ても態度を変えない彼にサナは苦笑する。
「感謝くらいはして欲しいわね、頭が要る仕事は全部わたしがしているようなものなんだから。」
「だから喧嘩は俺の仕事だろ。」
飲み終えたレモネードを見ると2杯目は要るかと聞いてきたので、大丈夫と答えると扉へ足を向けた。
「あんま、根を詰めるなよ。」
足音が遠ざかってゆく、サナは苦い表情で「貴方が甘いから仕事が増えるのですよ。」と呟く。
それをかき消すように大きく音を立てて風呂を出た。
