第2章


サナの視線を追って、マツリもそこを見ると何やら物々しい雰囲気が漂っていた。
「あれは…。」
目を凝らしてみると、輪の中心の人物が血を流して座っている。
はっとして隣に向くと美形はすぐに頷き、そこまで共に歩み寄った。
「何かありましたか?」
比較的話しやすそうな若い女性にサナは話しかける。
顔を青くしていた女性だが、サナの顔を見て一瞬赤くしたがマツリの存在を確認すると顔を元に戻す。
(…美人さんって大変だなぁ。)
何を勘違いされたのかは分からないが、とりあえず年の離れた妹くらいには思われたのだろうか。
唇を震えさせて女性は口を開いた。
「通り魔です…最近多くて。」
話によるとこの島では金銭目的ではない通り魔が出没しているようで、住民も困っているとのことだ。
狙われる対象は島の住民や外部の者問わず、子どもや高齢者も被害に遭っているらしい。
「他に被害者で共通していることはありませんか?」
真剣な話なのだが、傍から見ると女性を口説いている様に見えてしまうのは綺麗すぎるゆえか。
近くにいる男性が何やら白い目で見ている気がするのは考えすぎかもしれない。
「他…弱者を狙っているのか分からないのですが、女性ばかりな気がします。」
そこまで聞いて、島にいる警察が来て周りの人が払われる。
女性に礼を言って、2人はそこでその場を離れた。

「ふーん、じゃあそいつ捕まえれば報奨金もらえるな。」

何てことの無いような船長の言葉にマツリは呆気に取られる。
しかし、海賊のメンバーは毎度の事といった様子で話を続けた。
「それなりに被害は出ているようだけど、張り紙とかは無かったわよ。」
「ターゲットが決まっているなら狩り出てもいいぞ。」
「止めといた方が良い…無暗に夜に出歩いたら逆に犯人扱いされる。」
とんとん拍子に話が発展し、戸惑いながらも話を聞いていた。
一方自分には関係ないとばかりにガーナは頬いっぱいに夕飯を詰め込みノイに注意される。
「おい、時間も飯も逃げねぇからそんなに詰め込むな。」
「別にいいでしょ、つまらない話聞くよりはいっぱい食べていた方が楽しいもん。」
そこに否の声が出る、船長からだ。
「ガーナ、それとマツリちゃんも聞いた方が良い。」
口調こそのんびりとしたものだが、芯に岩が乗せられたような言葉にガーナは渋々よく噛んでから話を聞く姿勢になる。
「狙われているのは女性…年齢関係なくなら、2人とも対象だ。」
尤も前の事があったから女子2人しかいない状況は作らないと断言され、空気も駄弁りに似たようなものから変わった。
「一応外部の人間だし、捕まえることができりゃ臨時収入にもなる…だが、ボランティア気分でやることでもねぇ。」
「つまり…わざわざこちらから手出しする必要は無い、ということですか?」
確認の為にマツリが問うと彼は首を縦に振る。
「その…すみません、話の腰を折ってしまうのですが…それでは、何故わたしの時は関わって頂けたのですか?」

お金目当てとはいえ、仕事は選べただろう。
領主が大変だから手を貸したのは違う気がする。
率直な疑問に返った答えは。

「面白そうだから。」

単純にして明快、しかし意味が汲み取れない言葉が出てきた。
首を傾げたマツリに顔を渋くしてメソドが口を開く。
「すまん、つまりこういうことなんだ。」
「えっ…とぉ?」
まぁそうだろうなと船長以外の海賊たちは一様に微妙な表情だった。
「興味があるか、ないか…それだけの違いだ。」

マツリの件は、ただの窃盗騒ぎであれば海賊たちは何もすることもなく通り過ぎたであろう。
しかし、その窃盗の内容が不可解なものだった為賃金獲得も含め、サナとノイが警備へ行くことになった。

「結果的に凄く強力で魅力的なマツリちゃんとミツメが来てくれたから良かったし♪」
楽観視していると言えばそうなのだが、何となくこの人物が見ている視界も常人から異なって見えるかもしれない。
「まぁとりあえず、通り魔には気を付けような。」
さて飯も冷えるから食べちまおうと、そこで話しは打ち切られる。
ただ、マツリは視界の端に映る美形の曇った顔が何故か頭に焼き付き離れなかった。
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