第2章


それから少し日が経ち、生活必需品も少なくなったことから近くの島へ上陸すると船長から報告があった。
「この辺りは小さな島がちょいちょいあって、どこも人が住んでいるからな…逆にここを抜けちまうと暫く食料は自分たちでしか採れないし、加工品や薬、武器…あとは各自の趣味とかで必要なものがあったらここで買っておいてくれ。」
地図を広げておおよその現在地を示しながら、船長が注意を促す。
そこではーいとサナが手を挙げた。
「いいかしら?」
「いーぞ。」
「布地が少なくなってきて…あと船の修理用の釘や木材とかも買ってもいいかしら?」
その質問に船長はすぐに頷く。
「まぁ…船の財布はお前に管理してもらっているしな、予算内でいいぞ。」
「了解。」
「…食料。」
「この前使い過ぎたでしょ。」
ぼそりと小声で呟いた言葉はすぐさま却下された。
そして別の声が上がる。
「薬に使う薬草が足りなくなってきたから、いいか。」
「あっ、ガーナも…お花さんたちにご飯あげたい。」
「もちろんよ、マツリちゃん。」
ここまで一言も発言していないマツリへサナは声を掛ける。
「えっ、はい!」
「申し訳ないけど、大荷物になるから…手伝ってくれない?」
いや、荷物くらいならとノイが声を上げるが「貴方買い食いしたくなるでしょうが。」と青筋立てられたのでまたも黙るしかなくなる。
「あたしは…大丈夫です。」
よし、決まりと満足そうに頷くと美形のおねぇはまだ他に買うものが無いか確認する為船全体を見回りにリビングを離れた。

小さな諸島の中から一番流通が良いところを選び、そこへ降りたマツリとサナは商店街へと足を踏み入れた。
「…あの、これ安くならないですか?」
来て店を大体一周した後、ある八百屋に目を付け値切り交渉するサナにマツリは目を丸くする。
(ほ、ほんとに値切り交渉する人っているんだ!?)
マツリの育った島では、価格が一律でよっぽど商品が傷んでいない限りは値切り交渉する人さえいなかったので新鮮に感じたのと同時に見た目攻略するのが難しそうな男性を選んだので驚きで自分がしているわけでは無いのに鼓動が早くなる。
「これで妥当だと思うんだが?」
予想通りに下げる意思がなさそうな様子にも怯まず変わらず穏やかな表情で話す。
「向こうで見たお店だともっと安い価格だったのですが。」
「そりゃあ、あちらさんは安くまずいもん作っているからな。」
「あら、それじゃあこちらは高価で美味しいものを出しているのですか?」
「こちとら買ってもらうもんは子どもだと思っているからな、高いと思うんならよそを当たってくれ。」
目には見えないが交わす視線に火花が散っているような光景に静観しているしかないマツリは手に汗握る。
「うーんそれは惜しい…だってこちら、きちんと旬なものを取り揃えていらっしゃるですし。」
「世辞ならいいぞ。」
本当の事ですよ、と微笑するとある一つの野菜を手に取った。
「これ…とても美味しそうです、けれどこれ。」
くるりと店主に反対の面を見せると、店主は小さな声だが確かに唸る。
「美味しい故…ですね、虫が食べる訳だ。」
「……何が言いたい?」
「別に、ただ…美味しいものの中に歪なものが入っていると大変なのでは、と。」
他にもありますがね、と指さしで虫食いのものを教える柔らかい表情をしているがその視線は鋭い。
「どうでしょう、痛み物は流石にこちらもご遠慮願いたいですが…被害が少ないものは安く頂けないでしょうか?」
「………。」
「もしご満足出来なかったら、わたし共は旅人ですので…広告でこちらの店が良かったと、噂を流してもしてもいいですよ。」
勿論、その逆もねと言葉には出さなかったもののその微笑の温度が明らかに変わる。
結局散々渋った店主だが、傷んだものを半額で提供することになった。

一連の流れを見ていたマツリは目的を果たせてほくほく顔のサナを啞然といった表情で見つめていた。
「あ…でも、虫が食べているから、早く食べないといけないものでは?」
傷んでいるとはいえないが、そう伝えるとサナは問題ないというように首を振る。
「一部のものは除くけれど、きちんと調理すれば十分数日間…一ヶ月持ちますよ。」
食材の扱いは自分の担当では無いが、やり繰りをしているノイは瓶や保存用の箱に塩や酒を混ぜて寝かせると程よく熟成させることが出来るものがあると教えられたとサナは話す。
「これから長い船旅となるから、海で採れない食材はどうしても安く買って済ませておきたかったのですよ。」
「な、なるほど…。」
「その分、絶対に必要な塩やお酒は良いものを選ばないといけないけれど。」
その勉強の為にマツリを連れ出したのだと、本人は笑う。
(…本当に、頭の回る人なんだなぁ。)
最初の怪盗としての出会いから思ってはいたが、サナはよく考えている。
勉強のことにしてもそうだし、お金のことについても、他のメンバーへの気遣いもよく分かっていた。
正直、海賊などやっていなくても、十分世間で上手くやっていけるのではと思えるほどに。
海賊全員の旅の目的は最終的には一緒だが、内容に違いがあるという船長の言葉を思い出し、咄嗟にマツリはその口を開いた。
「サナさんはどうして…?」
質問をしようとしたのだが、サナがこちらではなく人だかりの方へ目をやっているので、何か安売りの店でも見つけたのだろうかと思い覗いてみた。
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