第2章


「さっきも言ったけれど、お勉強は大事なのよ。」

いまだに何とも言えない表情をしている二人に対して改めてというように先生らしく教え始める。
「わたしだって正直最初は嫌だったけど、今になって分かるの…言葉や文字にはそれなりの意味があって、コミュニケーションが成り立つのだから。」
じゃあ数字はなんでだよ、と隣の大男が問いかける。
「どこかの誰かさんがお金を使い過ぎた時に具体的な指標が必要だからよ。」
そこで投げられる冷たい視線にノイは目を背けた。
海賊に加入してから何となくは感じていたが、ノイは金遣いが荒いらしい。
反対にサナは船の会計を担っていて役柄も関係しているのか本人の気質に因るものか判断が難しいが、マツリは何度か買い物に対しての言い合いを目撃しているので、そこになるほどと一人心の中で頷いた。
「物価もその土地ごとによって変わるし、そういった知識もまたお勉強よー。」
というわけで、とサナは一冊の本をマツリに渡す。
「ここのページ、最初の見開きね…この物語の始めくらいは読めるかしら?」
「えっと…あっ、はい!」
「じゃあ、ノートをあげるからまずは書き写して文字を覚えましょうね。」
マツリは文字を書き始めると、部屋の扉が開いた。
「あーっ、生徒が増えてる!」
嬉しそうなその声の主は顔を見なくてももう分かった。
「ガーナちゃんも習っているの?」
「そうだよ!」
えっへんと胸を張って、彼女はマツリに絵本を見せてきた。
「…えっと、“ある魔人の物語”?」
ぺらりとその表紙をめくってみると、なんだか知らない言葉が並べられている。
「あー、ガーナちゃんの方が先に勉強しているから、マツリちゃんには難しいかも。」
必死に内容を理解しようと食い入るように見ているので、すかさずサナが助け舟に入ったがその言葉に反応したのがガーナだった。
「そっか、ガーナおねぇちゃんだもんね!」
心なしか鼻の穴が膨らんだように見えた幼女は、マツリに分からないところは無いかとぐいぐい聞きに来る。
「…同じく学ぶ仲間がいるのも、大事なことよねー。」
「俺終わったから戻るぞ。」
課題を見ない振りをして去ろうとするノイの首根っこを瞬時にサナは捕まえてすぐに席に座らせた。
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