第2章
洗濯物をたたみ終わり、サナに誘われるままマツリは船内を歩いていた。
「元々この船…立派過ぎるって思わない?」
「そういえば…。」
マツリが合流するまで、この船の船員は5人。
それにも関わらず、この船の中には部屋数も多く、倉庫、医務室、執務室、リビング兼食堂、風呂場、脱衣場…海賊船を基準として考えるのであれば充実している。
「客船みたいな…ひょっとしてこれも盗品…。」
その言葉を聞いてサナは文字通り腹を抱えて笑い出した。
「ふっ…あはは!そうだったらいいのだけどねー。」
きょとんとするマツリの表情も見ながらサナは説明を始める。
「残念だけど、そんな武勇伝みたいな立派な経緯じゃなくて…元々船長が持っていたお古なのよー。」
いやこんな船を持っていた船長も何者なのだ。
冷静にそんなことを考えてしまったのだが、サナに言っても仕方がないので今はその言葉を引っ込める。
「お…お古でこの綺麗な状態なんですか?」
「んー、綺麗なのはわたしの趣味かしらね。」
そこで思ってもみない言葉が飛んで出てマツリは目を丸くさせる。
「最初は全くもって分からなかったのだけど…わたし、なんちゃって船大工をしているのよ。」
本当になんちゃってだけどね、と冗談めいて笑うが、とんでもないことを言っているような気がする。
頭のキャパシティーが少しオーバーし、熱が出てきたところで目的の所についたようだった。
ぱんっ、と乾いた音が部屋に響く。
その音の元はサナが手を叩いた音だった。
「はい、そこまで…回収させてもらうわね。」
にこりと笑みを向けた先の女子はというと。
「え……っと。」
あまり顔色が良いとは言えない。
先程は顔を赤くしていたのが、今度は冷え切って青ざめている。
「だから気を付けろって言ったろ。」
隣に座っているノイも同じくげっそりした顔で、マツリに声を掛ける。
ちなみに座っている席の机にはどっさり書類が積まれていた。
「貸しが高いし、自分にとって都合がいいものとは限らねぇからな。」
それを早く言って欲しかったような気がするが、時はすでに遅い。
マツリたちが何をやっているかというと。
「勉学は後になってその有難さが滲み出てくるものなのよ!」
あからさまに不服というように眉間を寄せられるが、それを向けられる彼らの視線は正直好ましくない。
今彼らはそれぞれサナに課せられた学びを行っている。
ノイは先程サナに催促された宿題を、マツリは今の実力がどれほどか調べる為に語学と数式が書いてある簡単なテスト用紙を渡され、規定時間が終わるまで解いていた。
まぁ、結果は彼女の顔色がもう示しているようなものなのだが。
「…ふむ、やっぱり学校が無いところだったものね。」
「あー…はい。」
特に何が悪いということではなく素直な意見として言われるが、それでも身は勝手に縮んだ。
「サナさんは…学校に行っていたのですか?」
率直な疑問をあげると相手は首を振る。
「ううん、でも親に家庭教師は付けられたわ。」
それが凄く厳しくてね~とからから笑われるが、この時代学校に行くこと自体が稀に近いのにわざわざ家庭教師まで付けて勉強できるのはかなり限られた層になる。
(自分も人のことは言えないけど、海賊の皆さんも変わった出自の人が多いのかな…。)
マツリが考えに耽ると、横から「あんまりしゃべくるな。」とサナに向けてノイの不満が聞こえて我に返った。
