第2章
ぱたぱたと慌ただしく船内に入ってきたマツリは扉を閉めて一つ息を吐く。
「はぁ…にわか雨が降ってくるなんて。」
洗濯物の当番だったマツリは、午前中に干していた渇きかけの洗濯物を急いで取り込んでいたのだった。
幸い彼女は雲行きを早期に把握していたので、ずぶ濡れになる前に回収でき洗濯物をたたみ始める。
「あらあら、お疲れ様。」
自分の前に影がかかったと思えば、柔らかな声が降ってきた。
「あ…サナさん。」
振り向いて顔を覗くと声と同じく優しい笑みをしている。
「流石に6人もいると多いわねー、手伝いましょうか?」
こちらが返事をする前に相手はもう洗濯物に手を付け始めている。
慌てて大丈夫と言おうとするも、こちらにウインクを投げられた。
「いーの、わたしが大変な時に返してくれればいいから。」
話している言葉は女性が話す言葉ではあるが、それでも彼が美形であるということに変わりはない。
綺麗なものとはあまり縁が無かった少女はなんとなく照れてしまう。
すると、横から別の声が会話に割って入ってきた。
「気を付けろよー、そいつの貸しは高いぞー。」
すぐにサナがむっとして「何よー。」と返すも、声の主であるノイは構わずマツリへ助言する。
「変なところずるいからな、妙なところで使われるぞ。」
「ちょっとノイちゃん!」
変なことを吹き込まないでよーとノイに不服をいうと、そこであっと何かに気づいたようだった。
「そうだ、ノイちゃんで思い出した。」
「あ、何だよ。」
「宿題。」
その言葉に瞬時に反応したノイはすぐさまその場から消えていった。
彼の後ろ姿を見送り、よしよしと頷いているサナを見てマツリは何のことだろうと首を傾げた。
「あ、マツリちゃんも…そろそろかしらね。」
「はい?」
意味深な笑みを浮かべる彼の心意を、異能ともいえるマツリの目でも見抜けなかった。
