第2章
「これ、持ってみて。」
渡されたものを両手で持ち、マツリはその手の感触を確かめる。
「どう?」
「うーん、しっくりとは…。」
それじゃ別のを、とメソドは淡々と店に並んだ武器を選び始める。
その手慣れている様子にマツリは内心首を傾げていた。
(メソドさんって、医者…なんだよね?)
ノイがメソドに頼んだことは、マツリに会う武器を見繕って欲しいというものだった。
当初、マツリは自分が肉弾戦で戦う為に鍛えているものだと思っていたので驚いたのだが、ノイは別の考えを持っていた。
「お前の力がひ弱とは言わねぇ、だが早いうちに素手以外の戦い方を覚えるってのも大事なことだ。」
その考えにメソドも頷いた。
「まぁ、初めの内から色々覚えておくと手数が多くなって有利にはなると思う。」
「そう…なんですか?」
盗みは働いた経験はあるものの、直接人と格闘する機会が無かったマツリは二人の意見を素直に聞き始めた。
話し合った結果。
小柄なマツリに合うような長物の武器をメソドが同伴して店で買うことになった。
渡された武器を言われるがまま手に持ち、動かしてはみるもののこれといったものはあまりなかった。
「すみません…。」
吟味している間に涼しかった朝の風が暖かな昼のものへと変化していた。
「いや、早めに選ぼうとして適当に近い島で降りたんだ。」
仕方のないことだというようにメソドはフォローを入れる。
メソドの言葉通り早めに決めようと、最寄りの島に船を停め2人で出かけたのだった。
「加えてここは比較的治安がいい島だ、武器の品揃えが薄いのはそういうことだろう。」
そういえば、とマツリは周りを見渡す。
海賊に加入して各地を周って暫く経つが、治安の良し悪しがなんとなく田舎娘の自分にも分かってきた。
昼間に子どもたちが遊び、人々に活気がある。
(あとなんというか…雰囲気?)
目が異能力程に良いとはいえ、観察眼にも長けているかと問われれば話は別だ。
まだまだ人生経験も知るべきことも備わっていない彼女は、これから知ってゆくことにはなるだろうが。
「それでも、護身用に一つは持っておきたかったところだけれど…。」
「…なぁ、兄ちゃん。」
そこでマツリらしからぬ言葉使いで話しかけられたメソドは表情には出さなかったものの、マツリの顔を伺った。
マツリは渋い顔をして、無言でバンダナが巻かれている自らの額を片手で軽く叩いた。
「何。」
「いやー、根本的な問題だからちょい言いづらいんだが。」
少し間を置いてからミツメは話し始める。
「多少はあんた達と生活してきて、お互いどんな奴でどんな力を持っているかは大なり小なり分かってはきている…まぁつもりだがな。」
「………。」
「だから、なんとなくだが今の船の連中の戦闘力とか考えると、どうにもいらないんじゃねぇかって思う。」
「…何が。」
「申し訳ねぇが、こいつが前線で戦うなんてできないと思うんだが。」
周りに不審に思われないよう言葉に沿って口パクをしたマツリだったが、その表情を険しくさせた。
ミツメの疑問に、メソドはしばし目を瞬かせてから口を動かす。
「なるほど…それなりの情は持っているわけか。」
「「えっ。」」
思ってもみない言葉を出され、マツリとミツメは同時に声を出してしまった。
「…情なんかじゃねぇよ。」
「う、うん…。」
少し人気のない場所にメソドを誘い、二人は伝える。
「いわば利害の一致だ、最低限でも協力しねぇとこっちが迷惑かかるからな。」
「………。」
その表情に陰りを確認して、一つ息を吐くとメソドは告げる。
「オレはいい人振る程器用じゃない。」
ハッとするようにマツリは顔を上げメソドを見る。
その無表情に近い顔はこの目で見てもその感情は読み取れない。
「最初から全部見透かせる能力を持っている君を、いい感情を向けて接することは出来ないよ。」
あ、知っている。
その言葉を聞いて、メソドが自分に対してどう思っているのか。
理解してしまった。
「オレは、怖いんだよ。」
