第2章


とたとた、と可愛らしい足音が船内の廊下で響いていた。
音の主であるガーナは両手で絵本を抱きかかえ、何かを探すような仕草で歩いていた。
「あら、ガーナちゃん。」
すると、鍛錬室の前の扉で立っていたサナが声を掛けてきた。
「どうしたの?」
「ねー、マツリ知らない?」
その言葉を聞いてサナは合点がいったような表情をした。
「ああ…それでその絵本。」
「一緒に読もうって言ったのにぃ。」
むくれたその顔を見て、サナは苦笑を浮かべる。
「それね…もうちょっとかかりそうかしらね。」
え、とガーナが一声出した後、その声は聞こえてきた。
「おらッ、もうへばってんのか?」
「ま…まだまだ、お願いします!」
そして、衝突音やバタバタ素早く移動するような音がその耳に届き、ガーナは更に目を丸めた。
「…前に二人で美術品泥棒を捕まえた後に、マツリちゃんが言ってきたんですって。」
もう、と複雑な表情で呟くサナにガーナが疑問を投げる。
「何でサナは盗み聞きしているの?」
「それは…ガーナちゃん、ノイちゃんが先生ってどう思う?」
「絶対習いたくない。」
即答だった。
「まぁ、そうよね…あの子ぶっきらぼうな物言いが多いからマツリちゃんが心配でちょっと聞きに来たのだけど…。」
再度扉に耳を当てるサナを真似てガーナも音を拾ってみると。

「ちげぇだろ、そこはこうバッ、って避けてぐいだろ!」
「はい、こうです!?」
「おし、次はばーっていって、ぐっからのごっ、だ!」
「はい!」

一連の会話を聞いても似通ったもので、ガーナはサナに渋い顔を送った。
「え、何語?」
「…一応本人たちには分かっているみたいだからいいとは思うけどね。」
じゃあマツリちゃんの代わりにわたしが読みましょうか、とサナが提案するとしょうがないなぁと渋々ガーナは歩きだした。

「全く性格も違う子たちだけど…ノリは合うみたいね。」

どことなく満足げに微笑すると、サナはガーナを追って歩き出した。
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