第2章
「困りますねぇ…こちらお仕事中ですよ。」
まだばれているとは知らずに、ただのいたずらとして認識している相手に口をはくはくさせてるマツリを尻目に平然と言い放つ。
「仕事っつっても、盗みのだけどな。」
その一言で相手たちは表情を変える。
「…何を根拠に。」
「あの荷台の中に…」
「あっ、わわわ!!」
ここで正気に戻ったマツリが会話に割って入る。
「す、すみませんお仕事中に誤って石を投げてしまって…で、ではこれで……ッ」
ノイを引っ張ってそこから移動しようとするが、空いた隙間を塞がれる。
「ああ、そうだな…仕事の妨害の責任で、少し寝てもらうか?」
そして近くにいたマツリにその手に持っていた短刀が降りかかろうとした。
「仕事っつうなら少しは制服をきちんと着やがれ、偽物野郎。」
とっさにしゃがんだマツリの頭上を分かっていたようにその巨木の根のような足が軌道を描いた。
そして、短刀は弾かれ地に落ちる。
「そんなおっとりした刃物じゃ、刺さらねぇぞ。」
煽ぎの言葉に呼応して周りの賊たちが一斉に2人にかかった。
見るからに圧倒的不利、逃げ道すら無い。
なのに。
(どう、して…!?)
後ろで戦っている人物の意図が読めなかった。
付き合うと言いながら、自分たちを不利な状況に落としてまですることがこれなのか。
「ははっ、生きのいい娘がいるじゃねぇか!」
そもそもノイはともかく、非力な少女といえる自分が居れば足手まといにしかならないのではないか。
賊たちの攻撃を避けながら、マツリはできる限りの対処を考えていた。
「隙だらけだぜ!……!?」
殴りかかろうとした瞬間、マツリの体が一瞬で消えた。
「なっ、は…?」
「よそ見してる場合かよ!」
急に消えた少女に動揺している間に、ノイは顎を目がけて蹴りを入れる。
マツリの姿が消えたのは、ミツメによる幻術を使用したものだった。
ひとまず姿を消して、マツリは様子見をしようと距離を取るが、自分が居なくなったことにより、相手たちはノイに攻撃を集中させてしまう。
(ま、まずい…このままじゃ)
「てめぇの譲れないもんは、その程度か。」
鋭い一言が胸に刺さった。
「はぁ?」
「お前じゃねえ。」
すぐにみぞおち目がけて蹴りが飛ぶ。
喰らった相手は悶絶し、その場に落ちるも他の仲間はまだ出てくる。
「…正義だのなんだのぬかしては割にお前もこいつらと変わらねぇじゃねーのか?」
息をのんだ。
実際の重さも味も無いのに、酷く体に何かが走るような感覚が走る。
「護りたいって思うなら覚悟を持って、てめぇの手でやりやがれ!」
「分かってる!!」
倒れた賊の一人が持っていた武器である棒を、幻術で透過させてそのままノイに対峙している賊に向かって後ろから殴りかかる。
「ッ!?」
何が起こったか分からない様子でそのまま膝が折れ、倒れる。
「…に、逃げ」
「させるわけねぇだろ。」
咄嗟に足払いを喰らわして転んだ相手は痙攣を起こし、立つことが困難になった。
「ひぐっ!」
「がはっ!」
二つの声が聞こえたかと思いその方を向くと、2人を下した主が居た。
「お疲れさん。」
「…ノイさん、後で恨み言言ってもいいですか?」
その顔には明らかな疲れが出ていて、それを聞いたノイは「あー、手短に頼む。」とあくびれる様子もなく返した。
