第2章
(あれだけ楽しみにしていた奴が急に離れるとか…。)
そもそも付き添いの為に来たようなものであるノイは急に血相を変えて去ったマツリをすぐに追った。
大の男が少女の足より遅いことはなく、程なくして美術館の裏側にある通路でその姿を見つける。
「おい、な」
その言葉に建物の陰にしゃがんでいたマツリは振り向きもせず手で制す。
疑問に思ったノイはマツリの近くに行き、その視線の先を見た。
「…業者が絵を運んでいるだけじゃねーか。」
向こうでは、業者が黙々と美術館の絵を運んでいる作業をしていた。
業者は6、7人いて、荷物を運ぶ大きな台車があり、それを引っ張る運搬用の動物もいた。
「…あの荷台。」
「あ?」
「ノイさんの目には見えないと思うのですが…人が縛られて乗っています。」
剣呑な言葉にノイは口を閉ざす。
「人数は6、7人程…皆一様に裸にされているので、おそらく今表にいる人たちが着ていた制服があの人達のものです。」
「何でだ。」
「一部サイズが合っていないのか、きちんと着ていなかったり、パツパツの人がいるんです。」
淡々と話すマツリに、ノイは密かに驚くとともに納得した。
(お膝元じゃないとはいえ、伊達に盗みを働いていたわけじゃねーんだな。)
しかし、冷静にその場を見ていたマツリだが、少し感情を含ませて言葉を放った。
「あたし…昔から赦せないんです。」
美術館の質問の答えがその口から零れる。
「ろくに芸術の価値も、その品の物語も知らない人間が金銭に眩んでそれを手にしようとすることが…!」
「………。」
「これはあたしの勝手な正義です、あいつらが全部運び終わってそこから尾行して場所を」
後ろからヒュンッ、と風切り音がして「へ?」と間抜けた声が出るよりも先に「いてぇ!!」と運搬中だった盗人の1人にノイが投げた石が当たる。
「何でそんな面倒なことしなきゃならねーんだよ。」
そして迷うことなくノイはそこから進む。
「え、の…ノイさん!?」
「仕方ねぇ、付き合ってやる。」
先程の石投げで盗人達の視線が一斉にこちらを向いた。
「頼まれたからな、船帰るまで面倒を見るって。」
