第2章


浮足立つ、とはこの事なのかとマツリは先を急いでいた。
「おい。」
そこで後ろからノイに窘められる。
「早いぞ、置いていく気か。」
「…あ、ごめんなさい。」
「お前俺がいること忘れていたな。」
言われてみて思わず「あっ。」と声が出るその反応に溜息を吐かれてしまった。

しかし、マツリがこのように心躍るのも無理もなく。

「すみません、その、初めてだったもので。」
マツリとノイの目の前には、美術館と書かれた看板があった。

サナの提案で、マツリの創作意欲が湧きそうな場所で、尚且つノイにも絵の良さを知ってもらえるような場所を、ということで次の目的地にある美術館を2人は訪れることになった。
「あの野郎、要はただのお守りってことじゃねぇか。」
呟く言葉が耳に入っていないのか、マツリは港に置いてあった広告に作られた美術館のチラシに釘付けだった。
「あ、ノイさんあそこ!」
今度はぐいと服の裾を引っ張られて、渋々ノイは歩みを速めた。

美術館の館内は人が少なく、特に入場まで待つこともなく2人は中へと入った。
入り口に置いてあった、パンフレットを余すことなく持ってきてからマツリは美術品の鑑賞に浸り始めた。
置いていく訳にもいかず、ノイはマツリの後ろを付いていく形で連れ添っていた。
隣の少女は至近距離で見たかと思えば、後ろに数歩下がり全体で見たり、角度を変えて見たり、鑑賞するだけだというのにせわしい。
そこまで夢中にさせるのか、と思いノイもその風景画を見てみるが、正直綺麗だということ以外感想が湧かない。
サナには「ノイちゃんにはマツリちゃんが持っているような感受性が足りないと思うの、あと料理にも色彩感覚は必須だからそれも一緒に学んできなさい!」とのことだったが、本当に使えるのか怪しいところだ。
マツリの顔を改めてみると、本当に目が輝いていてノイは思ったことが言葉に出てしまった。
「どんだけ好きなんだよ。」
「え?」
唐突に話しかけられて、絵に集中していたマツリは驚いた。
「その…絵が。」
「あー、そうですね…物心ついたころからですけど、最初は描くことが好きでした。」
はにかみながら、マツリは自らの趣味の始まりを話し始めた。
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