第2章


穏やかな午後。
昼食を食べ終えたマツリは、スケッチブックと鉛筆を持ち船の甲板へ出て辺りを見渡していた。
「うーん、良い風…あ。」
何かを見つけたようで、船の端に行き下を覗き込んだ。
「…うん、いいな。」
1人で頷くと、すぐに持っていたスケッチブックを開きそこに鉛筆を滑らせた。

「…ん。」
昼食の皿洗いが終わったのか、ノイが甲板に出てきて熱心に何かを描いているマツリを見つけた。
「何描いてんだ?」
「……。」
「おい。」
「ぅわっ!?…あ、ノイさん。」
「お前どれだけ集中してんだよ。」
呆れ半分関心半分でノイがスケッチブックを覗き込んだ。
「あ、すっすみません…。」
「別に怒っちゃいねぇからいちいち謝んな…何だこれ、渦?」
「あああああっ、下手なので見ないでくださいぃぃぃ…。」
見られていることを知り、マツリはすぐにスケッチブックを閉じ胸に抱えた。
「下手かどうかなんて分らんかったぞ…で、何見て書いてたんだ?」
ノイはマツリが見つめていた先を見るが、描かれていた渦のようなものは見当たらず疑問を投げた。
「あ…ノイさんには見えないかも。」
マツリは自分の見ていた箇所を指さして教える。
「ここ…海上だから見えないかもしれないんですけど、魚の群れが渦を作って泳いでて…とっても綺麗で、太陽の光を受けて銀色に光り輝いている鱗や、全く乱れない渦も魅力的で…ノイさん?」
うっとりと説明している途中でノイはいそいそと動きだした。
「…んで、言わねぇんだよ。」
「はい?」
「何でもっと早く言わねぇんだよ!!」
いきなりの大声にマツリは肩をビクリと上げた。
「えっ、あの?」
「おいっ、メソド!」
ノイはすぐ近くで舵を切っていたメソドに声を掛けた。
「な、何?」
「今すぐ船止めて網用意してくれ、それか竿!」
バタバタとノイはそのまま船の中に走って行ってしまった。
後に残されたのは呆然としたマツリと、それを見つめるメソドだった。
「……大丈夫なの、捕っても。」
マツリの持っていたものを見て察し、声を掛けたがマツリは放心しているのか何も返事が無かった。
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