第2章


マツリはその光景に見入っていたが、動かなくなった男たちの後ろで動く影を見つけた。
「あっ!」
そういえばと思い出す。
最初、追ってきた男たちは3人で、今ガーナによって捕まえられたのは2人。
(残りの1人は―――!)
「問題ないよ。」
「え?」
「種、付けておいたし…それに。」
ガーナは後ろを振り返り、苦い表情を作った。

「…おっっっっっっっそい!!!」

バタバタとこちらに向かってくる人たちを見て、マツリは安堵の溜息を零す。
「おー、流石の手際だな。」
駆けつけたのは、船長、メソド、サナの3人だった。
「せんちょう!ちゃんと島に降りる前に情報収集しておいてよ、ガーナたちか弱い乙女なんだよ!!」
「おい、またサナの受け売りか…。」
「ごめんねー、ガーナちゃん…マツリちゃんも怖かったでしょう?」
「ああ、いえ…あたしは」
「マツリ、ちゃんと怒らなきゃ学習しないよっ!」
ガーナが怒っていると、未だに動いていた足元の植物がガーナをなだめるように頬を撫でると、シュルシュルと地面に潜っていった。
「…ガーナちゃんは植物と話せるの?」
「ん、そうだよ。」
あっけらかんと答えるガーナはそのままマツリに自分の能力を説明した。
「話せるのは植物と動物…でも、ガーナの血を飲んであんな感じになっちゃうのは植物だけ。」
「…そうなんだ。」
普通に話している様子を見て、船長が目を見開いた。
「あれ、まだガーナの力のこと知らなかったっけ?」
「…教えてなかっただけだよ。」
目線を下に落とし、ガーナは恐る恐るマツリに聞いた。
「怖かった、でしょ?」
ぎゅうと目を閉じ、その答えを待つ。
放たれた言葉は。

「え、綺麗だったよ?」

きょとんと、首を傾げて発言したマツリにガーナだけでなく、その場にいる海賊全員が彼女を見た。
「…綺麗?」
「うん。」
4人分の視線をその身に受けながら、たどたどしくもマツリはその理由を述べた。
「その…ガーナちゃんの血が地面に落ちた時、地面に埋まってる植物の全体が…こう赤い、優しい光が植物の全身を行き渡ったと思ったらしゅるしゅる伸びてきて…えっと、言葉にするのが難しいけれど…あたしは、ガーナちゃんの力を怖いって思わなかった。」
「赤い…光?」
「あー、それは。」
その声を聞いて、マツリは顔を曇らせた。
「オレらにしか見えんだろうな、赤い光とか地面の中とか。」
「…実際に赤く光ってんのか?」
船長が興味深そうにミツメに問う。
「いんや、常人なら目に見えない…おおよそ大体の生命体が持つ、目に見えないが纏っているエネルギー、オーラと呼ばれるものだ。」
「なるほど。」
合点がいったようで、船長はガーナの肩を優しく叩いた。
「良かったな。」
「………。」
「ガーナちゃん?」
「やっぱり、マツリはこの船に乗るだけあるよ。」
「え?」
ガーナは不思議そうにこちらを見るマツリに悪戯っぽい笑みを見せた。

「へんじん、だね!」

「え、えええ!?」
「帰ろ、どうせノイがご飯作って待っているんだから!」
ガーナは躊躇いなくマツリの手を引いた。

先に走る2人の様子を見て、サナは安堵したように溜息を吐いた。
「何だ、心配だったのか?」
「当たり前でしょ。」
お使いを頼んだのは元々自分なんだからとサナは苦い表情をして呟く。
「ガーナちゃんの言う通りよね~、完全に警戒心失くしてたわ。」
「でも、ハプニングのお蔭であんな感じになったんだろ。」
「更に言うと情報収集が遅くなった貴方の責任の方が重いですけどね。」
メソドの厳しい一言に船長は歩き出して「さて俺らも帰るかー。」と誤魔化した。
「…お前は気を回し過ぎだ。」
「!」
そういうの繰り返してると持たないぞ、とメソドは小声でサナに忠告した。
返事も待たずにそのまま歩き出したその背中にサナは独り言のように呟いた。
「メソドちゃんだってかなりのお節介の癖に…。」
すぐにその表情を変えると、サナも歩き出した。
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