第2章


何か幽霊みたいな言葉だけど、とマツリは自分が発した言葉だったが笑えてしまった。
「ガーナちゃん、船であたしの事見てくることがあったけど、こっちが話しかける前にどこかに行っちゃうことが多かったから…。」
「だ、だって、それは…って、見えてたの!?」
「三つも目があるからね。」
茶化したようにマツリが言うと、ガーナは強張っていた頬を緩めた。
「いたぞッ!!」
そこで先程追いかけてきた男たちの内1人の声がした。
「あっ!」
幻術が解けている状態で見つかってしまい、マツリは慌てた。
幻術を見せる術を持ってはいても、直接殴れるような武器は持っていないし使えない、更に格闘術や護身術もマツリは会得していなかった。
(どうしよう…あたし1人でガーナちゃんを守り切るのは…。)
「マツリ。」
そこでガーナがマツリを守るように前へ出た。
「ガーナちゃん!?」
「大丈夫だよ。」
先程のか弱いような表情ではない、寧ろ自身に満ちた表情をマツリに見せる。

「産まれたのはマツリの方が早くでも、船に…家族に入った以上ガーナの方がおねえちゃんなんだから!」

そう言うと、ガーナは着ていた服のポケットから小さなナイフを取り出した。

そして。
一瞬の迷いもなくその指を切った。

「…え?」
小さなナイフを悪漢たちに向けることなく、寧ろ自傷に走ったその行為にマツリは理解が追い付かなかった。
「動かないでね。」
男たちにではなく、マツリにガーナは声を掛けた。
「危ないから。」
ぎゅうと傷口を絞るように抓ると、血が流れてくる。
それが、地面に落ちた。

瞬間。

「ぅわっ!?」
男の1人が躓き、倒れた。
「何ドジってるんだ…!?」
起こそうとした男も引っ張られるようにこけてしまう。
「…こ、れは。」
マツリはガーナの足元を見て目を見張った。

「何で…いきなり草が邪魔するように生えてやがる!?」

男たちを転ばせたのは、植物だった。
だが、先ほどまでそんなものはなかったし、増して男たちの行く手を阻むようにアーチ状に地面から生えていて奇妙といえる出で立ちだった。
「くっそ…あ!?」
「何だよ?」
「手…手が!」
更に植物が男たちのいる場所に急速に成長し、手も拘束されてゆく。
「クソがッ…おい、ナイフだ!」
「これの事?」
「なっ!?」
その光景を見て、男たちは愕然とした。

ガーナの足元にうねうねと本当に現実なのか疑うほどに動き、成長している植物の根が見えたからだ。

更にその動く根は男たちの服を探り、武器を器用に取り出してゆく。
「な、なんだよこれ…!?」
「助けてくれ!!」
追い詰める側だったのが逆転し、男たちは助けを求めた。
「この子に聞いたんだけど。」
ガーナは顔色一つ変えず、男たちに話しかける。
「最近、この島で子どもが攫われることが多いって…。」
話している間にも、植物の拘束が強固なものへとなってゆく。
「あんたたちが犯人?」
「いっ…いや、俺たちは…。」
「…まぁ、ガーナたちを追いかけたから、犯人が違っても言い訳できないけど。」
「た、頼む…金でも何でも」
男たちの首に巻かれた蔦が蕾を付け、ふわりと咲いた。
その藍色の花弁をガーナは優しく擦ると、花粉が舞った。
「「っ!?」」
体をビクリと痙攣したような動きをすると、男たちは静かになった。
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