第20章

そこから数日、時間こそあれどそれ以上聞くのは気が進まず時だけが過ぎて行き、ただミツメから話された事は少しだけ追加があった。
「お前と父親が別れるきっかけになったのは…事故だ。」
それだけ。
マツリ自身がそれ以上言及しなかった為、目玉は何も言わなかった。
「…恐らく明日には着く、心の準備をしておけ。」
夜が訪れベッドに入る時小さく呟かれ、日頃目玉に対して反発心が先に来る彼女だが「うん。」と素直に頷く。
しかし、言葉とは裏腹につい考えてしまう。
(…聞いても良いって言われたのに、何でこんなに口から出ないんだろう。)
小さい頃幾度となく自分の出自について聞いた、しかしどれもが不確定で、しかも幼いマツリには分からない事も多く、教えてくれない大人と理解出来ない自分にどうしようもなく苛立ったのを覚えている。
もう教えてもらう事など無いと決め付け自分の人生を歩き始めたと諦めていた中、降って湧いた自分の生まれ故郷…そこに明日になったら辿り着く。
(分かるのかな…あたしの事やミツメ族の事…。)
昔の事に詳しい船長でさえ謎が多く、そもそも存在自体が幻と思われていた自分の存在がそこに行けば明かされるのだろうか。
そして、船長達が求めている理想郷の事についても何か分かるのだろうか、或いは―
(…見えない島が、理想郷?)
分からない事を今から考えても何も無い、そう分かっていてもどうにも止められず、マツリはむくりと起きる。
「…まつり?」
まさしく寝ぼけていると言った様子の声で、隣のベッドから声がした。
「ごめん、ガーナちゃん起こしちゃった…?」
自分より先に寝ていたガーナの安眠を妨害してしまったとマツリはすぐ謝罪の言葉を口にするが、ごそごそと布団の中にあった膨らみが移動し、ベッドを抜け出してこちらまで来る。
どうしたのだろう、そう聞こうとするとガーナはそのままマツリのベッドに入ってきた。
「一緒に寝る?」
「…うん。」
時折こういったお願いはあったので、マツリは彼女が寝やすい様スペースを開けるが、きゅうと抱き着かれる。
「ねぇ、マツリ…。」
子どもの力なのでそんなに痛くは無いのだが、何故かその時だけくっつく力を強く感じた。
「マツリが選んだ事なら反対しないけど…ガーナはもうちょっと、一緒に居たいよ。」
え、と声が漏れ出てしまう。
そんな事など考えていなかった…しかし、確かにガーナが言う通りもし島が自分の帰るべき場所だったら?とそこで初めてその考えに辿り着く。
マツリの感情が伝わるのか返す言葉を考えている間に、より体が密着してくる。
「―あたしも、離れたくないよ。」
帰ってきた赤子に島の住民がどう反応するか全く分からない。
けれど、この船で過ごした時はかけがえのないもので、すぐに手放せるものでは無かった。
だから―今は。
「ここの皆と…まだ、冒険していたいな。」
そっと彼女の背中に手を回すと、そこから伝わる温かな体温が眠気を誘ったのか、落ちる様にそのまま寝についていった。
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