第20章

深夜、ギィ…ギィ…と揺れている船に身を任せながら監視をしている船長は何度目かの欠伸をする。
「ねぇみ~。」
誰も聞いていないと思いながらも止められない独り言は、寝ない為の抵抗の一つだった。
灯りこそあるものの、いつどこから襲撃が来てもすぐ対応出来る様に航海中は毎晩一人夜勤をしているのだが、穏やかな海では緊張感も薄れどうしても眠くなってしまう。
(ま、日常的に眠いのはいつもの事だけど。)
する事も無くただ監視台で周りを見るだけじゃな~と首を動かしながら考えていると、非日常な光景が目に映る。
彼の目の前に『起きているか?』と文字が突然現れたのだ。
「…?」
思わずその文字を触ろうとしたが、霧の様に霧散してしまう。
どういうことかと周りを見渡すと、船の甲板に見知った人間が居た。
するりと、すぐに監視台から降りその人物の元へ歩み寄る。
「どうしたの?レディが夜更かしなんてするもんじゃない…けど。」
近くに来てみて理解出来た。

いつも見知っている彼女…マツリだと思っていたのだが、今の彼女は全体的に薄っぺらい。
例えるなら先程見た文字の様な、幻影としての姿だった。

先程話し掛けてきた言葉を思い出し、すぐに船長は考えを変える。
「ミツメ…か。」
どこから声を拾っているのかは分からないが、マツリの姿をしたミツメはこくりと頷く。
「珍しいね、こんな形で表に出て来るなんて。」
日頃、マツリの額にいる第三の目ミツメは、マツリの許可が無いと基本話さないし、勝手に話したとしてもすぐさま拳をぶつけられ表に出て来る事はほぼ無く、こんな形で…しかもマツリもいない状態、一対一で話す事は初めての事だった。
声が出ないのは、本体であるマツリは寝ていて声が出せないのだろう、幻影を出せる範囲はマツリ自身もよく分かっていない様子だったが、ミツメは理解出来ている様子でまた文字で船長に返事をする。

『話がある、今後行く島と―オレとマツリについて。』
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