第19章

彼の全てを知っている訳では無い、けれど初めて会ったその時からどことなく親近感を持っていたのはこれが理由かとサナは考えながら話を進める。
「わたし元々は貴族…って人魚に伝わるか分からないけど、とにかくお偉い人達の家族だったの。」
人間社会の事を理解出来るか分からない、しかしルルゥのこちらを見る目は真剣そのものであり、無言でサナの話を急かす。
「だから、子どもの頃から周りにお利口さんである事を求められたわね…人聞きの良くて、愛想の良い、良家のお坊ちゃん…おまけに見た目も良かったから、わたしに注目する人間も多かったの。」
あの頃は窮屈で仕方なかったわ~と昔の事を説明して嫌な思い出も過ったのかしかめ面をする美形に恐る恐る人魚は質問を口にする。
「―サナさんも、家が嫌で飛び出したの?」
「まあね。」
でも、とサナは苦笑しながら話す。
「わたしの場合は貴方みたいに誰かに助けられなかった…運悪く人攫いに捕まってそこで長年過ごす事になってしまったの。」
「え…。」
今こうして笑いかけてくれている人物がまさかそんな思いをしていたとは知らず、ルルゥの表情は驚きへと変わる。
「結果的には助けられたけど、だいぶ好き勝手に弄ばれたからも~精神も肉体もボロボロだったわね~…あ、細かく言うと聞く側も辛いでしょうから、そこは省略させてね。」
ちょっと話が逸れたけど、とサナは本題に戻す。

「何が言いたいかと言うと…窮屈である事も理由があるって事よ。」

サナの言葉に理解が追い付かないのかルルゥは首を傾げると、サナは説明する。
「貴方のご家族を擁護する訳じゃないわ、でも…言いつけを破った結果、今貴方はこうして人間…わたし達に捕まっている状態になってしまった。」
「それは…そうだけど。」
「わたし自身、家出した時は単純に外へ出てみたかっただけなのだけど。」
静かに首を振ってサナは己の過去をまるで他人事の様に分析した。
「結果的に―あの時は親や周りの人間の言う事を聞いた方が自分の為になったわ…わたしの安全を思うなら、ね。」
「………。」
サナの言葉はどこまで真実か分からない、しかし嘘まで言ってこんなに自分の事を大事にしろと言う様な話をするだろうか。
人間は信じない方が良い、そう思い込んでいたルルゥの考えが揺らぐ。
「とりあえず!」
ルルゥの思考を切る様に、それまで諭す様な優しい口振りだったサナは切り替わって明るい声を出す。
「貴方が出来る事は、無事に仲間達の元へ帰って自分の思いを伝える事から始めなきゃね。」
男ぶりを上げたイメチェンしたらきっと驚いて何でも言う事聞いてくれるわよ~と再度図を見せてどの髪型にするか聞き始めたサナに、その変わり様にルルゥは目を大きくするも自然な笑顔で答えた。
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