第19章

両手程で収まりそうな紙に描かれていたのは、複数の髪型だった。
正面だけでは無く、左右から見た図や形によっては俯瞰から描かれた物もあり、その自分が変われる選択肢の多さにルルゥは小さな、でも確かな期待をその胸に宿らせる。
「僕…本当にこんな風になれるの?」
絵に描かれた髪型の数々はこれまで自分がしてきた物とは違って、思った言葉がそのまま外へ出てきた。
「あくまでイメージだけどね、これに近い状態の物はお出し出来るわよ。」
本職じゃないけど海賊の皆の髪切っているのわたしだし~と胸を張って答えるも、相手からの返答は無くサナはルルゥの顔を見る。
「…信じられない?」
「いや、そうじゃなくて。」
浮かない表情に戻ってしまった彼、サナはひとまず開いていた紙をたたみ人魚からの言葉を待つ。
潤んだ薄桃色の唇が開け閉めされ、ずっと忙しなく動いていたが観念したのか、言葉が出て来る。
「選んで良いんだって、思って。」
聞こえた言葉、その意味をしっかり咀嚼する様考えてから大人は口を開く。
「…ずっと選べなかったの?」
目を伏したまま、しかし返答ははっきりと「ううん。」と首を振る。
「僕に似合うのはコレだからって…髪型だけじゃなくて身に着ける物とか、部屋での過ごし方とか…意見を言わない僕が悪いんだけど。」
昨日の様な不満の爆発では無いにしても、この思いが彼を海へ旅立たせてしまったのだろう、とサナは感じた。
(勝手にこうであるはずだって、本人の気持ちを蔑ろにし続けた結果かしらね…尤も、彼に与えられた対応全てが嫌な押し付けでは無かったのでしょうけれど。)
人の世界も大概面倒臭いが、人魚の世界も割とそうなのかもしれない。
「―ちょっと、気持ち分かるかもしれないわねぇ。」
思いがけない言葉だったのか、ルルゥは弾かれる様に顔を上げサナを見つめる。
「わたしも昔…似た様な事があったから。」
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