第19章

ルルゥの話によれば、人魚は女性が多く男性は少ないらしい。
その中で役割分担があり、女性の人魚はその美しい容姿と声で他の生物を惑わし、近くで控えていた男性の人魚がその生物を狩る事で食料を得ていた。
つまり本来男性の人魚は力を必要とする存在で、ひ弱な存在であるルルゥは自分が異質な男人魚だと説明してくれた。
「まだ僕は子どもだし、まだまだ成長するって言われたけど…他の同じ歳の子達と比べても弱いんだ。」
「あんなに大きいこえだせるのに?」
目の前で放たれたあの衝撃波を思い出してガーナが問うと「あんなの人魚じゃ普通に出来る事だよ。」と自暴自棄の状態でルルゥがぼやく。
「―じゃあ、その同い年の子達から嫌な事されて、見返す為に強くなりたいの?」
自分自身見た目が異質な事から同年代からも、その親達からも忌避されていたマツリが聞くと彼は首を振る。
「強くはなりたいけど…きっかけは違う。」
どういう事だろう、と首を傾げると人魚は顔を歪めて自分の心の内を打ち明けた。

「僕が弱いから、かわいいからって…皆から甘く見られて、囲われて、変な特別扱いを受けるのが嫌で…あそこから逃げたかったんだ!」

海面の下の両手がきつく握られているのを見て、マツリはハッとする。
(そっか、最初にかわいいって言われるのが嫌だって叫んだのは―散々言われて誉め言葉と受け取れなくなってしまったからだったんだ。)
人によっては言われて嬉しい言葉もあるだろう、けれどそれが自分に思って欲しくない言葉なら?
そうではないのに決め付けられる様な言葉を投げ続けられたら、それが貶している訳じゃない善意のつもりの言葉でも、受け手にとって言葉は矢にも石にもなる。
「少しでも群れを離れて強くなって帰ってきたら、そんな事言われないんじゃないかって…思っていたんだけど。」
しかし現実は非情で運悪く彼は人間に見つかり、あれよあれよという間に捕らえられ、より自分の未熟さを思い知ってしまった。
ルルゥの境遇に何と言葉を掛けたら良いのか分からず女子達は沈黙してしまう…が、その場にいる唯一の大人は違った。

「―要は、かわいくなくなれば良いって事?」

沈黙を破ったその言葉を発した人物に視線が集まる。
「そうと言えば…そうだけど。」
「じゃあ簡単じゃない。」
何て事の無い様な表情で朗らかにサナは告げた。
「力に関しては恐らくこれから徐々に付けていく物だから、見た目を変えれば良いのよ。」
うーん、そうねぇ…と首を傾げるサナを見て訝し気な表情をするルルゥにマツリとガーナは説明する。
「サナはね~へんそーの名人なんだよ。」
「別人になる事は難しくても、見た目なら力になれると思う…!」
あたしも男の子に変装させて貰った事があったけれどバレなかったし、とマツリが話すと人魚は信じられない目を向けた。
「人魚は基本裸だから、変えるとしたらやっぱり…。」
サナはじっと銀色の癖っ毛を見つめ、うんと頷く。
「時間を頂戴、貴方に似合う髪型を考えるから。」
自信満々に告げるも、相手は半信半疑に「…そんなに上手くいくかな。」と零した。
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