第19章

男女として対応が変わるのか、単純に弱いと思われているのかは不明だが、人魚は比較的女子達に関しては対応が軟化していた。
それでも聞ける事に限りはあり、いまだに彼の名前は聞けず、どこから来たのか、どんな生活をしてきたのかはまるで分からない。
ただ、元の住んでいた場所に向かう為の向きが合っているのか、好みの魚は何なのか、必要最低限の事は答えてくれるので、最近は口に付けていた猿ぐつわが取れた。
最大の武器である声を使って何かする訳でも無いので、そのままの状態で人魚は小舟に繋がれたままになっている。
とりあえず、マツリとサナ、ガーナとノイで組んで顔合わせをする事となったので、マツリはサナを案内した。
「人魚さん、ご飯の時間です~。」
ぷくぷくと海中に潜っていた人魚が顔を見せると、サナを見てすぐしゅっとまた潜ってしまう。
「あぁ、間違いじゃないです、戻ってきて~!」
小舟に括りつけている縄をぐいぐい引っ張って、強引に姿を見せてもらう。
「あら~恥ずかしがり屋?」
ぜぇぜぇと息を切らすマツリを横目で見ながら、サナは初めましてと挨拶をする。
「サナよ、船大工しているの…海の中だから特に関係無いかもしれないけど、おうちに辿り着くまで仲良くしてくれると嬉しいわ。」
よろしくね~とひらひら手を振るも、相変わらず警戒を解かない…が、マツリは人魚の表情に他の仲間には見せない表情が含んでいる様な気がした。
(何だろう、警戒も入っているんだけど…戸惑い?みたいな。)
「と、こ、ろ、で!」
小舟から身を乗り出し出来る限り人魚に寄せてきたので、相手も目を見開く。
「お肌真っ白だけど、何食べているの!?すっごくうらやましい!…人魚だから人間と肌の感じが違うからかしら?魚だけじゃなくて海藻とかも食べてる?わたし美容の事に目が無いから教えて欲しいわ~!」
いつの間にかマツリから縄を受け取り逃がさないとばかりに質問責めをするサナに、人魚はただ目を白黒させていた。
これまで改まって質問していたから、あたかも馴染み深い隣人に接する様な態度を出され無下にする事も出来ず人魚は困っている様子で、マツリに視線を移す。
「…あたし、洗濯物洗い忘れていました、ご飯ここに置いておくのでゆっくりお話しして下さい。」
何も問題無い、そう確信したマツリは迷う事無く後ろを向き、バシャバシャとやたら大きく聞こえる水音を聞きながら小舟から離れて行った。
10/14ページ
スキ