第18章

「―ッ!ぐ、あ…。」
あの光景と目の前で仄かに光っている葉巻の火が重なって、思わず海に投げ入れる。
落ちてゆく葉巻が遠くになっても、汗が滝の様に流れ両肩で息をし治ったはずの背中の火傷跡が酷く疼きその場に座り込んでしまう。
(クソ…油断した。)
昔の事は時折思い出す、それでもあの事故は思い出さない様に気を付けていたのに、今回の出来事で感傷的になってしまったのか、必要以上に浸り過ぎてしまった。
ある程度時間を置いてどうにか呼吸が整ってきた彼、ゆっくりと立ち上がる。
「情けねぇ。」
昔は出来ていたはずの強火での調理も不可能になってしまい、小さな火ならどうにか出来るが、ずっと火を見つめていると体が拒否反応を示し、先程の様になってしまう。
これ以上は良くない、そう思い意識を現在に戻す。
明日の朝食の事、食糧庫に残っている食材は何だったか、足が速い物もあるので片付けなければ腐らせてしまう、ああそうだ、食事だけではなく自分やマツリの鍛錬の事も考えなくては。
船の上から中へ移動し、洗面所へ辿り着いたノイは自分の顔を映す鏡をじっと見つめる。

「―こんな良い場所にいないなんてとんだ死に損だったな、ざまーみろ。」

立派な大人にしか似合わねぇと揶揄われたオールバックの髪と顎鬚を生やした親代わりの人物と全く見た目が一緒のはずの人間が、ぽつりと呟いた。
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