第18章
「オヤジ~最近入ったあの暴れん坊はどうよ?」
昼時、茶化した言葉と共に入ってくる客の声は店の奥でも届いて野菜を切りながら舌打ちをする。
それでも向こうには聞こえていないらしく声を掛けられた相手は返事をした。
「ぼちぼち、上手くないメシが来たらソイツが作ったとでも思ってくれい。」
この答えに笑いが食堂で湧くが、こちらとしては謂れのない事を言われて腹立たしい。
(何が不味かったらだ、下準備の野菜や肉切るだけで焼くだの煮るだのそういった事はやらせねぇ癖に…!)
あれから一ヶ月程経ち、俺は不本意ながらこの店で働いていた。
メシさえ食べれば勝手に死んでやると思っていたのに、何度も阻まれ転がされ体力が尽きる頃に新しいメシを食べさせられ働かされ…その繰り返しの日々。
働いた分だけ金を返したと思えと言われたのに、まかないだなんだとメシを押し付けられ食べてしまえば「はい、借金。」と終わりの無い日常を過ごす。
何とかして抜け出したくてケンカを吹っ掛けてみたり、敢えてメシを食べないなど反抗を試みてみるが、何度も壁や床に叩き付けられたり、メシを無理矢理口に突っ込まれたり散々な結果ばかり。
「どーせ行くあて無いんだから付き合えよ。」
まるで見透かした様に何度も言うもんだからその内出る事は諦めてしまい、すっかり店の客にも顔を覚えられてしまった。
このままでは…と思うのだが、昔の仲間や敵が一切来ない状況や不思議と昔の俺を知らない客が多いので前より荒んだ生活では無くなり、不要なくらいメシを貰うからある程度体にも肉が付き、背も高くなった気がする。
でも…それでも。
気に食わない。
じろりとこちらに近付いてきたオヤジと呼ばれるその人物を睨んだその瞬間、バチンッ!とデコに衝撃が走る。
「おめーさっき客に対して舌打ちしたろ、やめな。」
「~~~~~ッ!」
コイツは自分に対しての無礼ならある程度は許してくれる、しかし客の事になると話は別で失礼な態度を取るとこうして簡単な罰を出してくる。
どれもこれも小さなものだが、正直痛いもんは痛い。
せめてギッと睨み付けてみるが、向こうは痛くも痒くもないと笑う。
「かわいーねぇ、わんちゃん。」
「ノイだっつってんだろ!」
「…ま、そろそろ火の扱い教えるかね。」
切り終わった野菜を受け取り、代わりに食べ終わった皿を出してきた。
しょうがないので、今度は皿洗いを始めるが…俺にはまだ諦めきれない事がある。
出て行けないなら…せめて、せめて勝ちてえ。
これまで生きてきて、こんなに敗北感を覚える相手は一人としていなかった。
居たとしても自分とは生きている世界が違う金持ちの人間くらいだろうと高を括っていたが、これまで自分が持っていると思っていなかったプライドを嫌という程自覚させ、何度挑戦しても虫けらの様に払われてしまう圧倒的な強さ、そして何度突っぱねても関係無いと世話を焼くその心の広さにずっと負け続けていた。
ケンカでも、料理でも何でも良い。
ただ一つだけでも、アイツが「参った!」と言える何かが欲しくなった。
そうこうしている内に時間はあっという間に過ぎて行った。
昼時、茶化した言葉と共に入ってくる客の声は店の奥でも届いて野菜を切りながら舌打ちをする。
それでも向こうには聞こえていないらしく声を掛けられた相手は返事をした。
「ぼちぼち、上手くないメシが来たらソイツが作ったとでも思ってくれい。」
この答えに笑いが食堂で湧くが、こちらとしては謂れのない事を言われて腹立たしい。
(何が不味かったらだ、下準備の野菜や肉切るだけで焼くだの煮るだのそういった事はやらせねぇ癖に…!)
あれから一ヶ月程経ち、俺は不本意ながらこの店で働いていた。
メシさえ食べれば勝手に死んでやると思っていたのに、何度も阻まれ転がされ体力が尽きる頃に新しいメシを食べさせられ働かされ…その繰り返しの日々。
働いた分だけ金を返したと思えと言われたのに、まかないだなんだとメシを押し付けられ食べてしまえば「はい、借金。」と終わりの無い日常を過ごす。
何とかして抜け出したくてケンカを吹っ掛けてみたり、敢えてメシを食べないなど反抗を試みてみるが、何度も壁や床に叩き付けられたり、メシを無理矢理口に突っ込まれたり散々な結果ばかり。
「どーせ行くあて無いんだから付き合えよ。」
まるで見透かした様に何度も言うもんだからその内出る事は諦めてしまい、すっかり店の客にも顔を覚えられてしまった。
このままでは…と思うのだが、昔の仲間や敵が一切来ない状況や不思議と昔の俺を知らない客が多いので前より荒んだ生活では無くなり、不要なくらいメシを貰うからある程度体にも肉が付き、背も高くなった気がする。
でも…それでも。
気に食わない。
じろりとこちらに近付いてきたオヤジと呼ばれるその人物を睨んだその瞬間、バチンッ!とデコに衝撃が走る。
「おめーさっき客に対して舌打ちしたろ、やめな。」
「~~~~~ッ!」
コイツは自分に対しての無礼ならある程度は許してくれる、しかし客の事になると話は別で失礼な態度を取るとこうして簡単な罰を出してくる。
どれもこれも小さなものだが、正直痛いもんは痛い。
せめてギッと睨み付けてみるが、向こうは痛くも痒くもないと笑う。
「かわいーねぇ、わんちゃん。」
「ノイだっつってんだろ!」
「…ま、そろそろ火の扱い教えるかね。」
切り終わった野菜を受け取り、代わりに食べ終わった皿を出してきた。
しょうがないので、今度は皿洗いを始めるが…俺にはまだ諦めきれない事がある。
出て行けないなら…せめて、せめて勝ちてえ。
これまで生きてきて、こんなに敗北感を覚える相手は一人としていなかった。
居たとしても自分とは生きている世界が違う金持ちの人間くらいだろうと高を括っていたが、これまで自分が持っていると思っていなかったプライドを嫌という程自覚させ、何度挑戦しても虫けらの様に払われてしまう圧倒的な強さ、そして何度突っぱねても関係無いと世話を焼くその心の広さにずっと負け続けていた。
ケンカでも、料理でも何でも良い。
ただ一つだけでも、アイツが「参った!」と言える何かが欲しくなった。
そうこうしている内に時間はあっという間に過ぎて行った。
