第17章

体はすぐ隣、抵抗も動きもしないノイと、襲い掛かるヨウ。
結果は明白。

カランッカラカラ…

しかし、その場から出た音は悲鳴でも血が吹き出る音でも無く。
ナイフが床を転がる音だった。
「な、んで…。」
殺意は確かにあった、例え刺し違えても倒すつもりだったのにどうして、と呆然とするヨウを尻目にノイはそこから一歩離れる。
「おめーだろ。」
「邪魔しますよ、そりゃ。」
不満が言葉から漏れている、しかし声の主はつかつかと彼の元に寄ってきた。
「全く…身内にはとことん甘いんですから。」
「るせー。」
周囲の人間をあらかた捕獲した後、ノイとヨウの様子をいち早く察知したサナはヨウが持ていたナイフを目掛けて自分のナイフを当てその手から落とす―投擲技術が高いサナだからこそ出来た技。
「ただでさえ頬に傷が出来ているのに、更に増やすつもりですか?」
メソドに嫌味を言われますよ、と言われるが一向に構わないと笑う。
「たかだか一本の短刀なら死なない。」
「…!」
ノイの煽りとも取れる言葉にヨウは意気消沈していた顔から一転顔を赤くさせる。
「さて…二対一ですが、どうします、か…ッ!?」
ヨウに語りかけようとしたサナに突然ノイが蹴りかかった。
急に何をと怒りの一言でもぶつけようと思うが、自分が立っていた場所に短刀が刺さっていた事を知りサナは一瞬の怒気を引っ込める。
「やっぱいたか。」
蹴ったノイはサナに見向きもせず、その武器を投げた方向へ顔を向けた。
その場所は―天井。
壊れかけた小屋だからこそ、穴が所々出来ていて、梁に立っていたその人物がヨウの隣へ降りて来る。
「イー、ヨウ…お前ら二人にはだいぶ世話になっていたからな。」
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