確かに似顔絵では見ていた、しかし無自覚にも本当はそんな事が起きるはずが無いと思い込んでしまっていた。
だからだろうか。
「…ッ！」
「くッ…。」
相手から攻撃を受けて現実に戻った時、自分が動くのが遅くなっている事にやっと気付いた。
それでも相手からの攻撃、すんでのところでその右手に持つナイフを避ける事が出来る。
(―この攻撃方法…間違いねぇな。)
距離を置こうとするが、相手は即座に詰めて来てすぐに自分にトドメを刺そうとしてきた。
だが、そのがむしゃらな攻撃方法は、明らかに早く倒そうと躍起になり過ぎて相手の感情が焦っている事が丸分かりだとノイはその攻撃をかわしながら不審に思う。
(いつもなら冷静な方であるはずのコイツが…。)
本来なら、こんな場でする事などでは無い。
自分は口なんかより、行動で示す方がよほど得意だ。
交渉事など他の奴等の方が得意で、自分など出る幕は無い。
けれど、どうしても。

言葉を交わしたくなる。

「辞めねぇか、ヨウ。」