第17章

いきなり現れた部外者に周りは一気に騒然となる。
「テメェ誰だ!」「どっから来やがった!?」「返答次第じゃタダじゃおかねぇぞ!」
四方八方から武器を突き付けられても「まあまあ。」と顔色変えず両手を上げるだけの船長に変わらず黙って睨み付けていた頭が問う。
「要件は何だ、男。」
頭の言葉で騒いでいた周囲の人間は黙り、船長により視線が集まる。
「いやね、お話聞いていたら船が必要って仰っていたじゃないですか。」
そこでね~…と彼はいつもと変わらず自分のペースで話を切り出す。

「ウチ、ちょうど船持っているんですよ…良かったら乗ってきます?」

彼の口から放たれた言葉、それ自体は彼等トカゲにとってはまさしく渡りに船だろう。
しかし、あまりに出来過ぎた提案に誰もがすぐに言葉を発しなかった。
「―本当に、船を持っているのか?」
「はい~、ウチは旅しながら商売をしているもので。」
半分本当で半分嘘である。
「そろそろここの島から離れて別の島で商売をしようと思いまして…皆さんも如何でしょう?」
お代はそうだな…と船長は中央に置かれた盗品を指差す。
「こちらだけ頂ければ十分ですので…船旅一つ、これだけ大勢でこのお題ですから…破格でしょ?」
依然船長の周囲は武器が向けられたまま。
緊迫した空気の中、一つの音が発せられる。

「ふ、ふふ…ははははは!」

頭が大声で笑い出した。
日頃ほとんどそんな様子を見せていないのか、周りの部下達は目を大きくしている。
「…っふ、見上げた商売根性だな…俺達をトカゲだと知っての言葉か?」
ええ勿論、と船長は笑う。
「どこから入って来たのか、何を思っての言葉か知らんが…その態度だけは褒めてやる。」
そして、のっそりと立ち上がったその瞬間。

ざくり、と。
突き付けられていた武器が船長の体に刺さる。

「ただな、俺達は盗られた物をやるつもりも、船に乗せられるつもりもねぇ…船は盗ませて貰うがな。」

にやりと、口の端から黄色い歯がこちらを覗いた。
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