第17章

昔の仲間、その言葉を聞きサナは以前ノイが語ってくれた話を思い出す。
「昔…ノイちゃんが不良集団にいた頃の?」
無言で頷く彼に、なるほどなとサナはずっと消化不良の様な状態から解放されてゆく。

今は改心しているが、その昔ノイは住んでいた島で盗み・喧嘩に明け暮れた少年時代を過ごしていた。

(聞いた時は猜疑心が生まれたものだけど、生まれた境遇を思えば自然な事だったのよね。)
いまだ晴れない顔をしているノイに「それで。」と言葉を続ける。
「今会って不都合なお相手なのかしら?」
思っても見ない返しにノイは目を丸くした。
「どんな状況ですれ違ったのか知らないけど…そんなに悩むなら会った方が早いと思うの。」
「―いや。」
首を横に振った後に言葉が出て来る。
「俺は足を洗ったが…アイツはまだ汚れ仕事をしている可能性がある。」
根拠は?とサナが聞くと、ノイは昼間での出来事を話す。
「見間違いかもしれねぇ、だが…アイツのスリには俺も助けられていたから、腕は確かだ。」
「なるほどね。」
気軽に会ってみては?と意見したが、相手が犯罪者となると話は別だとサナもそれ以上は言わない。
彼自身が既に答えを持っている事が分かったから。
「俺自身悪さばっかりしていたから、今更あーだこーだ言うつもりも無い…船の連中に迷惑掛けるかもしれねぇしな。」
だから会わない、そう言い切る。
「…話して落ち着いた、ありがとな。」
「いいえ。」
おあいこですもの、と美形は小さく笑った。
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