第16章

金属音が響いていた船上、そこに寝ている男と座っている男、そして…。
「助かった、ありがとな。」
無表情から一転、いつものにやけ顔が戻りその声を掛けた人物へ向けられる。
「結構遠くに居たと思うけどよく間に合ったな。」
「―マツリががんばってくれたのと、船のなかにいる子たちがおしえてくれたから。」
むっすりとした表情で答えるのは、褐色肌の少女。
「一回まかれたけど、マツリがもう一回さがしてくれて…でもちからを使い過ぎたらしいからうごけなくなってガーナだけ来たの。」
コレ使って、と両足に絡み付いている植物を見せて来た。
「あ~それバネになって大きなジャンプ出来る優れモンだよな、人が居ない場所でちゃんと使ったか?」
「たてものの上にのぼらせてもらって、屋根の上つかってきた。」
ガーナは物言いたげな顔をしながら、寝てしまったメソドの頬を人差し指で突き起きないか確認する。
「…で、来てみたらみんな助けてっていってるし、せんちょーもメソドも何かたたかっているし。」
訳が分からない、とじろりと船長を睨む。

「船長、本気で殺そうとしたでしょ。」

質問などでは無い。
どこまで見ていたか、植物達から聞いていたのか知らないが、少女は明らかに二人の間で起きた事を知っている。
日頃見せる事の無い幼い子どもとは思えない冷えた顔を見ながら、それでも彼は態度を変える事無くそのままの調子で話す。
「だってさぁ…向こうが真剣に殺そうとしているのに、いつもみたいになあなあで対応するのも良くないでしょ?」
挑発してきたし~と悪びれる様子も無く言う彼。
「皆が悲しむ事を勝手に一人でやらないでって話をしているの…分かるでしょ。」
しゅるりと先程メソドを眠らせた木が成長し、船長の背後に回り…枝葉が刺々しい物へ変化する。
嫌でも分かるその気配に、船長はすぐに両手を挙げた。
「はい、勝手してすみませんでした!!」
反省してます!と言うと、ぞぞぞぞぞと後ろの存在が去って行く。
「―ふねに傷つけちゃった事、サナに謝っておいてね。」
それ以上は何も言わず、淡々とリンリン草を手に持ち他の船員へ連絡を取る。
その後ろ姿を見ながら、船長は小声で「お母さんに怒られちまったなぁ…。」と零した。
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