第16章

確かに刺さった。
投げられたサーベルはメソドの元まで飛んでいってはいた、しかし。

サーベルを止めたのは、船の下から無理矢理割り込む様生えた木だった。

「んあ。」
唐突に起きた非現実的な出来事に、拍子抜けた声を出すメソド。
すると、その声に反応したのか、その生い茂った葉からしゅるりと蕾が実り花咲く。
彼は何が起こるか分からず、ただ距離を置こうと後ろに下がろうとしたが、そこで先回りして後ろへ回った船長が足払いをしメソドは転ぶ。
「んがっ、てめぇ…。」
すぐに起き上がろうとするが、ふわりと風に乗りメソドの顔へ花の花粉が襲う。
「俺には基本薬系統は効かないけどさ…お前は違うだろ?」
しぱしぱと目を開け閉めする様子を見て、やっと事態の収束が見えた船長は勝利宣言とも取れる言葉を口にする。

「酔っ払いの夢はこれで仕舞い…続きはまた今度な。」

すやすやと寝始めた船医に、やれやれと言った様子で船長はその場で座り込んだ。
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