第16章

吹っ飛んできたのは言葉ではなく、サーベルと火傷しそうな殺意。
頭に向かって真っすぐ飛んできた刃物をぐにゃりと上半身を反らして避け、起き上がった顔はにやけている、まるでいたずらが成功した子どもの様だった。
しかし、目の前にいると思っていた船長は消えていて、ぐるりと体の向きを変えると自分が飛ばしたサーベルを拾いに行っている。
「おい。」
明らかに先程と様子が違う、ちゃりと武器が擦れる音がメソドの体の近くで鳴った。
それは、いつでも準備が出来ているぞと言っている。
「それ、二度目はねぇっつたよな?」
船に刺さったサーベルを引き抜き、その矛先をメソドへ向けた。
「ああ、そうだな。」
「―ま、お前覚え良いもんな。」
ぎし、と踏み出す一歩、それだけで船が悲鳴を上げる。

「じゃあ今度は体にも覚えさせてやるよ。」

一歩、しかし人間の踏み出す歩幅とは思えない程の跳躍で、メソドの懐に一気に彼は踏み込む。
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