第1章(前編)
ある程度の買い物を終えた二人は船へ帰ってきた。
「「ただいま~。」」
「お帰りなさい!」
「あれ、ノイは?」
「夕飯の仕込みよ。」
「聞いて、サナ!島にね、お菓子屋さんがあってメソドがキャンディ買ってくれたの~。」
「あら、よかったわねぇ~見せて!」
「うん!」
「だから、寄り道するなって言っただろ!!」
「ム…。」
「いいじゃない、キャンディぐらい。」
「俺がいいって言ったんだよ、かまわないだろ?」
「どーせ『ねぇ、メソド買ってぇ!』とでもぐずったんだろ。」
「いいもん、ノイには見せてあげない。」
「おうおう、好きにしろ。」
「煩いな…。」
「あ、せんちょう。」
「だから、もうちょっと考えるべきだったんだと思うんだ。」
「何をだ?」
「海賊達の事。」
ムマジが作ったお手製のスープをすすりながらマツリは話した。
「この島は観光客はまず来ないから、一般人だろうが海賊だろうが金を払える人なら大歓迎だけど…。」
「いいじゃねぇか。」
「え?」
「それで儲かった奴らもいるんだろ?」
「まあね…だけど、今日は早く知らせ過ぎたかも。」
「しょうがねぇ事じゃねぇか、お前が見付けたんだから。」
「…あの海賊、明らかに周りを警戒してた。どうしよう、気味が悪いっていわれて何か島民の皆を傷付けるような事があったら…」
「マツリ。」
ムマジはぐっと両手でマツリの顔を掴み、自分と視線を合わせた。
「俺らを何だと思ってる?」
「ふぇ…?」
「俺らはお前が思っているようなちゃちな野郎どもじゃねぇぞ。もちろんお前もそうだし、今俺らはお前に救われてる。だがそれが何だ、お前魚を釣る時は誰に頼む?」
「…漁師のおっちゃん。」
「そうだな、じゃあ野菜が欲しい時は?」
「八百屋のおじさん。」
「な、だからお前が余計な事は考えなくていいんだよ。皆自分の身は自分で守る。」
「でも、最初に見付けて騒いだのは…」
「それは、お前の役割だ。気にする事じゃない。」
「………。」
「お前はもっと自由に生きていいんだよ。」
「………そう、なのかな?」
「そうだよ、ごちそうさまでした。」
そう言ってムマジは食器を片付け流し台の方へ運んで行った。
(そうだとしても、あたしは皆に恩返しがしたい。こんなあたしを受け入れてくれたんだもん…。)
そっとマツリは心の中で吐露した。
「そうそう、マツリ。」
流しからムマジの声がした。
「じっちゃん、何?」
「お前今日――――仕事の日だったよな?」
