第16章

難航するかと思っていたメソドの捜索、動きがあったのはマツリの調子が戻り、行動再開出来た直後の事だった。
「おい、酒雨の時間だってよ!」
「急ごうぜ!」
周りの明らかにお酒好きそうな大人達がこぞって移動をし始めたので、少女達がきょとんとした顔で見送っていると去って行く客達の後片付けをしていたお店のおばさんが声を掛けてくれる。
「お嬢ちゃん達は行っちゃ駄目よ!」
「あの…向こうで何があるのですか?」
遠目で見ても明らかに人だかりが集まってゆくので、マツリが聞くと「あぁ…。」と彼女は答えてくれた。
「新酒のお試しとして、酒蔵が新酒を建物の上からぶちまけて皆に飲んで味見して貰おうっていうイベントさ…この島の伝統のイベントでね、他にも酒の雨が降る場所は時間帯によって違うから嬢ちゃん達も道には気を付けた方が良い。」
「とおれなくなっちゃうの?」
「通れなくなるならまだいいけど、下手すりゃ囲う様に開いちまって通せんぼになって帰れなくなるからね…何かあるなウチに来な、飲めない客の避難場所だから!」
勿論ある程度のお金は貰うけどね!と言われ(この島の人達は皆商売上手なのかなぁ…。)と思いつつお礼を言って彼女達はそこを離れる。
「どーしよ、マツリ…あちこち行けないってなるとさがすのむずかしくない?」
いんや、とそこで頭上から声がした。
「逆に分かりやすいかもよ?」
「…何でそう言い切る?」
ぶっきらぼうにマツリが尋ねるとミツメは笑う。

「メソドのにーちゃん、酒が好きなんだろ?…だったら、そんな酒が降る場所に行かない手はねーんじゃねーか?」

その一言に彼女達ははっとなる。
「行けるところまで行ってみよう!」
「うん!」
酒の匂いがする向こう側へ、彼女達は走り出した。
14/29ページ
スキ