第1章(後編)
「あ、うん、別に構わないけど。」
即座に返された言葉にマツリは、緊張で強張っていた体をビクリと飛び上がらせた。
「えっ…え?」
「別にいいよ。」
「…今、何と?」
「いや、だからご自由にどうぞって。」
もういいよね~とマツリに寄ってきて、その手に持っている海賊たちの所有物をもらっていく。
「寧ろ歓迎かな、人数が足りないと航海って大変だし。」
「ちょ、ちょっと待った!」
そこでツッコミ担当のメソドが声を上げた。
「君、保護者は!?」
「あ、じっちゃんの事ですか…?」
「いや、その人は知らないけど、ちゃんと言ってあるの!?」
「言ってあります…というか行って来いとまで言われました。」
「…君、歳は?」
「14です。」
「……なら、止めておいた方がいい。」
え、と驚きの表情を浮かべるマツリを見て、メソドは落ち着いて話を続ける。
「俺たちの目的は現実味のない果てしないものなんだ、生半可な気持ちで来られても困るし、君自身の人生もかかってる…そんな若いなら尚更人生を棒に振るような真似はしない方がいい。」
真剣に話しかけるメソドだが「やだ~メソドったら間接的にディスってくる~。」と後ろから呑気な声が聞こえ明らかに表情を険しくした。
「…現実味、ですか…。」
顔を下に向けたマツリがポツリと呟く。
「それがちゃんとあったら、良かったのですけど。」
「…え?」
「えっと、船長さん…でいいですか?」
「ん、俺?」
「今からあたしの能力の理由と、船に乗りたい理由を見せます。」
「お、やっとか…って見せる?」
話すのではないのだろうかと船長はマツリを凝視する。
マツリは少し震えた手を頭まで持ってゆくと。
一気にその頭に巻かれている真っ赤なバンダナを取った。
そこには。
額には切れ目がありゆっくりと蠢き、開いた。
それは、目の前の景色を映し出す。
見間違えることのない、目玉だった。
「…あたし、人じゃないかもしれないんです。」
悲愴な声をマツリは絞り出した。
