第16章

呟いた一言がガーナにも聞こえたのか、ガーナは首を傾げる。
「あ…考えていた事が口に出ちゃった。」
「マツリ、ふたつめってなに?」
あぁ…とマツリは少し複雑な顔を見せた。
「いつもの状態より、より周りを見通せる状態なんだけど…ちょっと体が動かなくなるの。」
「…むりしなくても良いとおもう。」
話を聞いてガーナは心配になり、言葉を掛けるも彼女は「ううん。」と首を振る。
「ワガママ言ってられないよ、この島の人達にも迷惑になるかもしれないし…やる。」
人通りが少ない路地裏に入り込み、マツリはしゃがみガーナに自分を隠す様に立って貰いたいと頼む。
「あと、サナさん達にすぐ連絡出来る様に準備して待ってて。」
うん、と頷く彼女に笑顔を見せた後、その顔はすぐに真剣な物へ変化する。
「―久し振りだけど、いけるでしょ?」
「もち~。」
軽い調子で答えられ、彼女は青筋を立てるも黙って自分の額に巻かれているスカーフを首元までずらす。
ぱちりと動く額の目玉と、閉じていた下の両目…その片方、右目を開く。
(捜査、開始。)
先程の店から範囲を広げ、より視野範囲を増やす。
本来ならその場所に移動しなければ見る事が出来ない風景も、その場に居る見ず知らずの他人の視界を借り、対象がいないと分かればまた別の人物の視界へ移る。
数分経過後、マツリの表情が徐々に苦痛を耐える様へ、そして汗も止まらない状態に変わり、ガーナは慌てた。
「マツリ!?」
「嬢ちゃん、大丈夫だ。」
何も大丈夫じゃないでしょ、とガーナは思うも目玉は冷静に伝える。
「負担掛かる事やっているからな…だが、今止めると逆にただ体力を削いだだけになっちまう。」
だからマツリの体力が尽きるか、先にメソドが見つかるかまで待ってくれと端的に言われ、ガーナはそれ以上何も言えなくなってしまう。
(まだ…まだ見つからない。)
息を荒げながら、もうどこを見ているのか分からなくなっている所もあるが、どうにか尻尾だけでも掴もうと彼女や躍起になる。
すると。
「ッあ゛あ゛~!」
低い声の短い叫びの後、彼女はその場に倒れた。
「マツリ!」
肩で息をしながらガーナの方へ顔だけ向けた彼女は、小さな声で言う。
「ガーナちゃん…サナさんに繋げて…。」
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